LIVE HOUSE下北沢ERA(エラ)
- 住所
- 東京都世田谷区北沢2-34-5 プリマヴェール下北沢4F
- アクセス
- 京王井の頭線 / 小田急線 下北沢駅東口から徒歩3分
- キャパシティ
- スタンディング 200名
- TEL
- 03-5465-6568
- 問い合わせ
- era@rinkydinkstudio.com
- 公式HP
- http://s-era.jp/
2002年にその歴史をスタートさせた下北沢ERA(以下、エラ)。今回インタビューさせていただいた久保寺豊氏は、3代目の店長だ。店長歴は10年以上になる。学生時代からエラでライブを観て、自分のバンドでそのステージに立ち、ブッカー(ブッキングを担当する人)を経て店長になった。コロナ禍では、エラを存続させるため、エラで働く前に経験した営業職のノウハウを生かし、様々なアイデアを自分の足で実現していった。アーティストからの指名でラジオ番組などに出演することもあるという久保寺氏。彼の音楽に対するスタンス、そして情熱に迫る。
――“下北沢ERA”の名前の由来から教えていただけますか?
久保寺:僕は3代目の店長をさせていただいているのですが、エラがスタートした1年目からバンドマンでライブに出ていたんです。その当時の店長と話す機会があり、時代とか新しい音楽が生み出されるような場所って意味合いでつけたっていうのは伺っています。当時、僕も新しい音楽、その時の日本になかったような感性の音楽を作りたいと思ってバンドをやっていたんですよね。そういうのもあって、エラにはまった(=目指すところがマッチングした)のかなと思います。僕が学生時代、洋楽やいろいろな音楽を聴いてそれを消化して、日本人が演奏して独自の音楽を追求していくっていう……そういうバンドが周りにもいてエラに出ていてすごく面白いと思っていました。成長したら当時の店長からオススメされて、かっこいいと思えるバンドと対バンできるのも嬉しかったですね。開店から20年以上経った今でもその思いというか、そういう(エラの)スタンスは継続していると思います。出演してくれたバンドに対してよく言っているのは、面白いことやりなよってこと。技術は後からつくから、いろんな音楽を聴いて発見して、自分なりに消化して、他には無い感覚、そういう個性を生み出して欲しいっていう思いがすごくありますね。
――他には無いジャンルというところで、エラが生み出したジャンルをあえて挙げるとすれば?
久保寺:生み出したとは言えないですがいろいろあると思うんですけど、開店当初の話で言えば、それまでなかったポストロック。それからインストバンドはエラは多かったです。例えば、mouse on the keys、LITEとか。toeも出演していただいたことがありライブが衝撃でした。インストバンドって、1990年代はほぼいなかった。いたとしてもわずかだったんですね。それが海外からの影響を受け、流行り始めたのが2000年になってからかなと。エラのわかりやすい特色として、インストバンドっぽい……ポストロックっぽいというのか、いわゆる単音の音符を複数の楽器で重ねて構築するっていう手法の演奏とかを取り入れるバンドがジャンルに関わらず出てきたり。例えば、ギターがアルペジオ2本重ねて曲を構築するとか、鍵盤とギターが同時にメロディーを弾いて組み合わせて楽曲にするとか。さらには、そういう演奏を主体とした歌があるバンドも表れたりしましたね。2010年頃になると、indigo la Endが出て来た時はこういう楽曲のアレンジをするバンドって周りにいないなと思って面白いなと思いましたね。楽曲の構成も、A、B、サビとかっていう王道じゃない。王道は王道として僕の中でもありだとは思っていますが、転調したり小節を切ったり、自由に曲や構成をアレンジしているバンドはすごく魅力的でした。聴いていて飽きなくて面白かった。
あともうひとつはいわゆるエモって呼ばれるジャンル。エモって解釈は人によるとは思いますが、基本的にエモーショナルって言葉からきていて熱量を指す場合もあるし、感情が見える、揺さぶられる。スクリームとエモーショナルを足してスクリーモってジャンルに派生していった部分もあったりするとも思います。ハードコアのバンドもそうだし、ハードコアではないバンドでも使われたりする。例えば、自分が好きで尊敬しているenvyも昔からエラに出ていただいていて、静かなシーンからいきなり動になる曲があったり、シャウトがあったり、でも歌でのメッセージ性がある歌モノでもあると僕は思うんですね。そういう今までに聞いたことがない新しい音楽を創ってきた先駆者に憧れて影響を受けて、エラでライブをやってみたいと来る若いバンドマンもたくさんいましたし今もいます。僕自身も何より創造性あるバンドに憧れてエラに出たいなと思って出続けていました。エラができた頃から活動していて、エラに出ていただいていたバンドで、今の若い子たちが影響を受けているアーティストは結構いらっしゃるんですよね。そういうアーティストは、海外ツアーも多いですけど、日本でライブがある時は個人的にも観に行かせていただいています。今、エラの特色をジャンルで質問されたので、ジャンルでお答えしましたが……でも「他のジャンルやっていたらダメ」、「エラっぽくない」とか、そういう思いは微塵もなくて。面白いことやっていたら応援したいなっていうのが、僕の中でずっと変わらない意志ではありますね。
――久保寺さんがさっきから仰っている“面白さ”についてもっと具体的に言うと? つっこむ質問ばかりが続いてすみません!
久保寺:そんな、全然、問題ないです(笑)。何でも聞いてください(一同笑)。面白さを具体的に言うと……まず、バンドの編成や形式に固執しなくても良いと思うところですかね。ドラムやベースもいなくてアコギで弾き語りとか、ソロでバックトラック流して歌うだけでも、その楽曲と歌がかっこいいなら面白い。例えば、以前にブッキングライブに出てくれてバンド編成じゃなくて面白い、新しいと思ったのはMOROHAとか。弾き語りに近いスタイルで、メッセージ性がすごく強い。表現したい音楽が2人の歌とギターで完結していると感じましたね。あとは、水曜日のカンパネラ。知り合いを通してライブに立ったことが無い時のコムアイさんを紹介して頂き、曲を聴いたらすごく面白くてエラで何度もブッキングしたんですよね。バンド編成しかいない中の対バンに組み込んで、水曜日のカンパネラはオケを流して歌うっていう。オケもかっこいいし歌っていることも面白くて、すごく対バンからも好評だったんですよ。ジャンルも固めず、編成形式も考えずにブッキングしている。お互いに面白くてかっこいいと思えばありかなという音楽感覚かと。面白いアーティストがいて、面白いアーティストを探している人がいる。そういう出会いの場になればいいなと思いますね。
――面白かったらこだわらずに、どんどんブッキングする。それがエラの個性にもなっていると思いますか?
久保寺:そうかもしれないですね……。ただ、これはエラのイメージを周りから聞いた意見なのですけど。今言ったようなインストバンドや面白いアーティストがたくさん出てくれていたことで、特に若手のバンドマンとかからはエラは敷居が高いって言われることがあるみたいです。でも、絶対にそんなことはないです。1回もライブやったことのないバンドでも是非出て欲しいんです。ここは、書いて欲しいです(一同笑)。20年以上やってきたライブハウスなので、イメージってあると思うんですけど、エラは来るもの拒まずっていうスタンスですから。ただ、ライブを1回観て、もっとこうすれば良くなるのにな……と思ったら、そこはちゃんとアーティストに言います。でも、例えば僕やスタッフが、正直にライブの感想や意見を言って、中には厳しい言葉があったとしても、悪い意味にとらないで欲しいんです。もっと良くなってほしい、良くなると思うから言うのであって。例えば、面白いことをやっていても、演奏の技術がいまいちだなと思ったら、そこはちゃんと言います。逆も然り。演奏が上手くても面白みがあまり感じられないなと思ったら、いろいろアドバイスします。最初は、好きな音楽の好きなフレーズに似てもいいから、真似をして、そこからいろいろなエッセンスを融合させて自分たちの色にしていくといいとか……こういうアドバイスをすることは昔から多いですね。ただ、気を付けているのは、必ずライブを観た後に話すこと。ライブ観ないと判断できないですから。あとライブを観ることがそもそも好きです。それから出演したアーティストたちによく言っているのは、悩んでいることがあったら、聞いてきて欲しい、と。そうしないと成長しないし、探求心って絶対に必要だと思います。アーティストとして、自分でかっこいい要素を見つけるのが大事。だから遠慮せず、どんどん聞いてきて欲しいなと思います。
――ライブ後のアーティストから聞かれる質問で1番多いのは?
久保寺:1番多いのは「どうでした?」って。それで「何がどうでしたなの?」って返すっていう(一同笑)。「何がどういう感じだったの?」って聞き返すんですよ。そうすると「演奏で…」と始まる。そうするとこっちも、そこに答えますよね。あとは、バンドを始めたばかりの人とかによく言われるのが「自分の音どうですか?」って質問。そういう時は、自分の音はプレイも含めてライブの都度良くなっていくから、バンドだったらバンド全体でどういう音を意識してバランスを作ったのか、気持ち良く演奏できたのかを感じて欲しいという話をします。今の若い世代のバンドのブッキングは、僕の下に長田(おさだ)というブッカーがいるので彼が頑張ってくれています。長田は元々、僕がほとんどブッキングをやっている頃からエラにライブを観にきてくれていたし自身のライブで10代のうちからエラに出ていた人だから、僕のやり方、考え方も全部知っている。僕がやっているようなバンドとのコミュニケーションも知っているし、エラの系譜をしっかりついで働いてくれていると思いながら、彼の仕事を横で見ています。まだ成長途中ではあるかもですが長田が良いと思うバンドや言葉は信頼しています。最近は土日しか出演出来ないバンドも多くて土日は基本イベントで埋まってしまうのでブッキングを組めず申し訳ない時はありますが……。話は戻りますが、バンドを始めました!というバンドも気軽に出演相談していただけたら嬉しいです。
――この仕事をしていて1番嬉しさを感じる瞬間は?
久保寺:楽器を演奏するのもままならない状態からエラに出ていて、ライブを観ててどんどん成長していくのを感じる瞬間。お客さんが増えていって、ライブというその空間を一緒に共有して、うぉーっって盛り上がった時。ライブ中、そういう成長が観られた時が1番嬉しいですね。
――ブッカー(ブッキング担当)、店長と、長年エラで仕事を続けてこられた理由はなんだと思いますか?
久保寺:やりがいのひとことですね。特にブッカーって、バンドをブッキング組むことや、イベントを作ったり話し合うのも、バンドとコミュニケーションとるのもすごく体力使うから、やりたくないと思ったことも何度もありますが……。自分がいたからこそ、いろんなパターンのアーティストの成長が見えた時に面白い。最初は、なんとなく続けていた感じもあったんですけど、それがやりがいに変わって来たって感じです。ブッキングの仕事で働き続けてもう20年くらいになりますかね。エラを使ってくれているバンドに対して、ちょっとだけでもいいから、それぞれの望む道、アーティストへのプロセスの手伝いになったら嬉しいのかな、と。それを感じることができて、やりがいになりましたね。でも本当に大変が95%で、やりがいは5%くらい(一同笑)。 でもね、やっぱり僕、エラが好きなんです。エラをもっともっと良くしたいって気持ちがある。頭抱えながら高い機材買ったり(笑)。今働いてくれているスタッフも同じ思いを持っている人が多いですし、頼りまくってもいます。だから大変なこともたくさんあるけど、やりがいを持ってPAや照明、ホールスタッフもみんなでライブハウスを続けられているんですよね。
――今、おすすめのアーティストを教えてください。
久保寺:この取材のオファーをいただいた際に、Eggsに載っているアーティストがいいっていうのを事前にお伺いしていたので、Eggsサイトで調べたんですよ。たくさんあるので、自分なりに年代別でわけてピックアップしてみました。
――ありがとうございます!
久保寺:22~23歳くらいだと、Cata。エラにライブで出てくれていて、最近観たライブがすごく良くなったなと思ったバンドです。それから、同世代でひとひら。大学生でゲネラル・パウゼ。次に20代半ば~30代手前くらいのバンドだと、Marie Louise、1inamillion、AGATHA、fulusu、EASTOKLAB、Ezoshika Gourmet Club。次にもっと上の年代になるんですけど、個人的にすごく好きなのが、Episode、ANYO。あと、MIRRORも。新譜、めちゃくちゃ良かったので是非知って欲しいです。
――最後にインディーズシーンの“Eggs(卵)”たちにメッセージをお願いします。
久保寺:自分が面白い、かっこいいと思う音楽を追求し続けてください!
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