メロディーと言葉のマッチングに注目!Bat Rat Maker(バットラットメーカー)の新曲
Bat Rat Maker(バットラットメーカー)は、2023年4月に結成されて以降、都内を中心にライブ活動を展開。2023年12月に初音源となる「Anon」をEggsで発表。同年5月に公開された「Anon」のミュージックビデオは、公開から1週間で3万回再生を突破するなど、初音源を発表した時点で既にインディーズシーンで注目を集める存在だったことが窺える。2024年初EP『Experiment01』をデジタルリリース。
Bat Rat Makerのサウンドは、一言で言えばビルドアップされた骨太なロック。ギターロック、ガレージロック、ラウド、オルタナティブ、ポストパンク、ポストハードコアなどをルーツにしながら、ファンクやジャズなどの要素も垣間見える。タイトでシンプルなメロディーと言葉のマッチングで生み出すキャッチーさも魅力で、1曲1曲の中毒性も高い。
2025年2月28日にEggsでデジタルリリースされたBat Rat Makerの最新曲 が「Death?」。“死”という言葉をタイトルに据えながらも、歌詞に<生きてるだけで丸儲け>出てくるところに、現実と自分を冷静に分析する力と洞察力があることが窺える。
ソリッドなギターと<Wow Wow…>という掛け声のようなボーカルで軽快に幕を上げる本曲。イントロからノイジーなギターリフと重厚なリズムセクションの絡み合いダンサブルなグルーヴを作り出していく。アップチューンだが、途中でテンポを落とすブロックのコントラストが面白い。テンポダウンのブロックでは、ベースがジャジーなアプローチを見せるほか、ダブを思わせるサウンドエフェクトを取り入れるなど、このバンドが、アレンジはもちろんミックスダウンにもこだわっていることがわかる。そしてこのブロックから、一気に加速するダイナミックなバンドアンサンブルで楽曲のインパクトを見事に印象付けている。
そして同曲には、特筆すべき点が他に2つある。一つはメロディーと言葉のマッチング。韻が随所に散りばめられその語感で曲にバンドアンサンブルとは別のビート感を加えている。さらに、歌詞の中で疑問を定義した後<です、です、Death? >や、持論を言葉にした後に<なんです、なんです、なんです Death? >という歌詞が出てくる。“デス”という語感だけで、肯定と強調を使い分けるその手腕は、作詞家としてもかなりレベルが高い。そしてもう一つ触れておきたいのがボーカルのアプローチ。母音、特に“エ行”の扱い方が独特で、ビブラートやしゃくりなどで絶妙な湿度を出しているが、サウンドとのコントラストで強烈なフックにもなっている。“イ行”や“ウ行”では無意識で弱音を使っている感もあり、ボーカルとしてこれからどのように進化していくのか、想像するだけでも心が躍る。クリアで少し高めの声質もいい。重厚なバンドアンサンブルとの対比で、埋もれることなくバンドサウンドと並行して突っ走って行く。
単なるヘヴィチューンではなく、聴く人に歌とメッセージを確実に届けようとするこのバンドのスタンスが発揮された名曲だ。
文・伊藤亜希