6月27日、28日の2日間、札幌市中央区・SAPPORO CULTURE FARM/凹場 anaBaで開催された「GREEN STREET × FROM STREET PROJECT powered by Eggs」。北海道ゆかりのシンガーソングライター12組が、街なかのオープンスペースを舞台に、それぞれ個性豊かなステージを繰り広げた。ここでは、その2日間で見えた音楽の風景を振り返る。
<DAY1>
平池 桜|優しい歌声が会場を包み込む

トップバッターを務めたのは平池 桜。サポートキーボード・悠を迎えたデュオ編成で、「オクラのうた」からライブがスタート。柔らかなキーボードの音色に乗せて響く透明感のある歌声は、青空の下によく映える。「春を生きる」「South」と楽曲を重ねるにつれ、遠巻きに眺めていた人たちも少しずつ足を止め、ステージ前のテーブルは徐々に埋まっていった。ライブイベントの始まりを告げるにふさわしい、穏やかで温かなステージ。慌ただしかった街の時間が少しだけゆっくり流れ始めたようだった。

setlist
- 1. オクラのうた
- 2. 春を生きる
- 3. South
- 4. イデア
- 5. 求:
- 6. その日暮ら
ヨネダケンゴ(でかくてまるい。)|ロックンロールで空気を一変

穏やかな空気を一瞬で塗り替えたのがヨネダケンゴ(でかくてまるい。)だった。「ロックンロール」の一音目から汗がほとばしるように歌い上げる姿は圧巻。全身から放たれるエネルギーをそのままぶつけるような歌声に、ステージ前には自然と人が集まり始める。「メロディ」「またね」と勢いそのままに駆け抜けると、ライブハウスさながらの熱気が屋外にも広がっていった。屋外という開放感の中でも埋もれない圧倒的なエネルギー。街なかにロックンロールが響き渡る瞬間だった。

setlist
- 1. ロックンロール
- 2. メロディ
- 3. またね
- 4. Gコード
- 5. 名前の無い歌
タキグチカイト(札幌某所)|語りかけるような歌声が心に届く

「Don’t remember me」から始まったステージは、まるで一人ひとりへ語りかけるようだ。飾らない歌声と繊細なギターの音色が重なり、観客は自然と楽曲の世界へ引き込まれていく。「札幌」では、この街で歌うことへの思いが風景と重なり、「月の頃」「声」と静かに物語を紡いでいく。最後の「最前線」まで、一音一音を丁寧に届ける姿が印象的だった。激しく感情をぶつけるのではなく、寄り添うように歌を届ける。そんなタキグチカイト(札幌某所)らしい世界観に、多くの観客が静かに耳を傾けていた。

setlist
- 1. Don’t remember me
- 2. 札幌
- 3. 月の頃
- 4. 声
- 5. 最前線
工藤朔一|切なさの中に吹き抜ける爽やかな風

続いて登場した工藤朔一は、切なさを帯びたメロディーと爽やかな疾走感を併せ持つライブを展開した。「平凡」「別れの約束」では感情を丁寧に乗せた歌声が心に響き、「キモチ」「花」と進むにつれて、ステージ前には軽やかな空気が広がっていく。センチメンタルな楽曲でありながら決して重たくならず、どこか前向きな余韻を残すステージで観客を引き込む。

setlist
- 1. 平凡
- 2. 別れの約束
- 3. キモチ
- 4. 花
- 5. 1111番線
若月樂(KOHAKU)|ハプニングを一体感へと変えた堂々のステージ

徐々に日が傾きはじめ、この日最も多くの観客が集まる時間帯に登場したのが、KOHAKUのボーカル・若月樂だ。「kibi」からライブをスタートさせると、バンドでもおなじみの楽曲をアコースティックアレンジで披露。真っすぐ伸びる歌声は屋外でも存在感を放ち、「泪の星」「アイボリー」と楽曲を重ねるたびその場の熱量も高まっていく。
ライブ中には思わぬ機材トラブルが発生したが、若月は焦ることなく笑顔を見せながら状況に対応し、観客も温かい拍手で後押しする。ハプニングが起きても誰一人張り詰めることなく、その場にいた全員でライブをつくり上げていく空気が生まれていた。

setlist
- 1. kibi
- 2. 泪の星
- 3. アイボリー
- 4. 町を編んで
- 5. シティーガール
ヒロト(北風と太陽)|観客とともにつくり上げたフィナーレ

初日のラストを飾ったのは北風と太陽のヒロト。「北極星」から勢いよく駆け出すと、その爽やかで伸びやかな歌声が夕暮れの空へと響き渡る。「ナイトトレイン」「ふるさと」「全身全霊」と、タイトルどおり全身で音楽を届ける姿に、観客たちのボルテージも最高潮に達した。ライブ終盤には「ラー、ラー、ラー」と観客へシンガロングを呼びかける場面も。最初は照れながら口ずさんでいた人たちも、次第に大きな歌声で応え、ステージと客席の境界はすっかりなくなっていた。
そして最後は、「何か単語ください!」という呼びかけに、客席から「夏!」「自転車!」「ラーメン!」と次々に飛ぶ声。それらを受け取ると、ヒロトは間髪入れずギターを鳴らし始める。
「♪サマーラーメン、自転車で急ごう」
即興とは思えない軽快なメロディーに客席には笑い声と拍手が広がり、ストリートライブらしい自由さと温かさに満ちたフィナーレとなった。

setlist
- 1. 北極星
- 2. ナイトトレイン
- 3. ふるさと
- 4. 全身全霊
- 5. 即興
初日は、穏やかな弾き語りから熱量あふれるロック、観客を巻き込むパフォーマンスまで、多彩な6組がそれぞれの個性を発揮した一日となった。札幌の街角に、音楽をきっかけとした新しい交流が生まれた――そんな手応えを残しながら、イベントは2日目へと続いていく。
<DAY2>
前田かのん|爽やかな歌声での幕開け

2日目のトップバッターを務めた前田かのんは、「愛を束ねて」からライブをスタート。前日の熱気を受け継ぐような爽やかなナンバーで、会場を心地よい空気へと包み込んだ。透明感のある歌声は青空によく映え、「ライブ」「スペクタクル」と楽曲を重ねるごとに、観客も自然とリズムを刻み始める。ラストの「青+透明。」まで穏やかな空気を保ちながら、2日目のスタートにふさわしいステージを届ける。

setlist
- 1. 愛を束ねて
- 2. ライブ
- 3. スペクタクル
- 4. 青+透明。
こばしひな|楽器を持ち替え、豊かな表情を描く

続くこばしひなは、前半はキーボード、後半はアコースティックギターという構成でライブを展開。キーボードでは繊細で柔らかな世界観を描き、アコースティックギターへ持ち替えると一転、軽快で伸びやかなサウンドへ。編成が変わるたびに表情も変わり、一人のシンガーソングライターが持つ幅広い魅力を感じさせた。「シンチレーション」「私を見ないで」では感情を丁寧に歌い上げ、「RIDE ON BIKE」「地球侵略」では観客を自然と笑顔に変えていく。歌詞に合わせて豊かに表情を変えながら歌う姿も印象に残った。

setlist
- 1. シンチレーション
- 2. 私を見ないで
- 3. RIDE ON BIKE
- 4. 地球侵略
Ceru|浮遊感あふれる音世界で魅了

ここまでの爽やかな流れを受け、Ceruはまた違った色合いを見せる。アコースティックギターを巧みに操りながら紡ぐ繊細なサウンド。そこへ重なる浮遊感のある歌声と心地よく響く低音が、会場をゆっくりと包み込んでいく。「Child」「imagine」「ドラマ」と楽曲を重ねるたびに、街なかとは思えないほど静かな時間が流れ、観客は自然と演奏へ引き込まれていった。屋外という開放的なロケーションだからこそ、そのサウンドの奥行きがより際立つステージとなった。

setlist
- 1. Child
- 2. imagine
- 3. ドラマ
- 4. ステップを踏んで
- 5. うつくしいのは
カンジ(The Hurry’s)| 澄み切った歌声が夕暮れに響く

The Hurry’sのカンジは、優しく澄んだ高音で会場を魅了した。「edian」から始まるライブは、派手さで押すのではなく、歌そのものの力で惹きつけるステージ。合間のMCでは熱い言葉も投げかけ、一部の観客の目には涙もみえる。「あめだま」「517」と楽曲を重ねるごとに、その透明感ある歌声が夕方の風景へと溶け込んでいく。力強さとは違う、静かな説得力を持ったライブだった。

setlist
- 1. edian
- 2. あめだま
- 3. 517
湊 ゆず|笑いと表現力、その振れ幅で魅了した圧巻のステージ

イベントも終盤を迎え、ステージに登場したのは湊ゆず。MCが始まると、軽快なトークで観客との距離を一気に縮めていく。テンポよく繰り広げられる話に客席からは何度も笑いが起こり、初めてライブを見る人も自然とその空気へ引き込まれていった。しかし、ひとたび歌い始めると雰囲気は一変する。「時代はブルース」では芯のある歌声で観客を引き込み、「J-45」「仏間」と感情豊かに歌い上げる。そしてラストの「正義と犠牲」では、一曲ごとに表情を変えながら、自身の世界観をしっかりと描き切った。
親しみやすいMCと、楽曲で見せる真剣な表現。そのギャップがより歌を印象深いものにし、この日のハイライトの一つとなった。

setlist
- 1. 時代はブルース
- 2. J-45
- 3. 仏間
- 4. 正義と犠牲
温州みかん|笑顔あふれるステージで2日間を締めくくる

2日間のラストを飾ったのは温州みかん。「最終列車」から元気いっぱいにライブをスタートすると、その明るいキャラクターと前向きな楽曲でその場の空気をさらに盛り上げていく。「夜更かししよう!」「スターレイン」では客席から自然と手拍子が起こり、会場全体がリズムに合わせて身体を揺らす。日が傾くにつれて、札幌の街角に笑顔が広がっていく。ラストの「缶チューハイ」まで駆け抜けると、客席からはこの日一番ともいえる大きな拍手が送られた。
最後の一曲が終わっても、すぐには帰ろうとしない人たち。出演者へ声を掛けたり、投げ銭を手渡したり、写真を撮ったり。それぞれが余韻を楽しむ光景が、このイベントの温かさを物語っていた。

setlist
- 1. 最終列車
- 2. 夜更かししよう!
- 3. スターレイン
- 4. 缶チューハイ
北海道の音楽が、街へ開かれた2日間

初開催となった「GREEN STREET × FROM STREET PROJECT powered by Eggs」。2日間を通して感じたのは、ストリートライブだからこそ生まれる空気だ。演奏が終わるたび、出演者のもとへ投げ銭を届ける人の姿や、「またライブ行きます」と短い言葉を交わす光景も、この2日間を通して何度も見られた。札幌の都心で、これほど多彩なシンガーソングライターを無料で楽しめる機会は決して多くない。ライブハウスへ足を運ぶ人だけではなく、街を歩く人が偶然音楽と出会い、新しいアーティストを知ることができる。そんな“出会いの場”として、このイベントは大きな可能性を秘めているように感じた。「GREEN STREET × FROM STREET PROJECT powered by Eggs」が、この先も北海道のアーティストと街、人をつなぐ場所として根付いていくことを期待したい。
文章:山下恭平
写真:Mika Ichikawa

















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