東京発の3人組akebonoが初音源「ここに」を発表。全身全霊で“今”を駆け抜けるアップチューン
東京を拠点に活動するakebono(アケボノ)は、2024年9月に結成された3ピースバンドである。インディーロックやギターロックを主なルーツに持ちながらも、キャッチーなメロディにメロコアやJ-POPに加えフォーキーな趣も感じる。このメロディの深さに個性と大きな可能性を感じる。
まだまだ粗削りながら、シンプルなバンドアンサンブルと歌声をしっかり自分たちの持ち味にしているところもいい。バンドの存在そのものが切実で誠実、ゆえに聴く者を捉える強い力を持っている。
2025年3月にEggsで発表された彼らの初音源「ここに」は、疾走感あふれるアップチューン。ひたむきなバンドアンサンブルのエネルギーが鳴り続ける。“今この瞬間”をメンバー全員が全身全霊で鳴らすサウンドには、“この瞬間を見逃すな”と語りかけてくるような切迫感すらあり、そこがダイレクトにサウンドの迫力になっている。タイトでシンプルなフレーズを主軸にしながらも、途中でメランコリックなフレーズを入れるなどメロディで見せるコントラストもいいフックになっている。
<ここに君はいない>というフレーズから始まる歌詞は「君」への思いを綴った失恋ソングだが<明日も嘘になる><明日を嘘にしてよ>と「明日」への不安と現実、対する切なる願望を助詞(てにをは)と語尾を変えるだけで表現しているのもお見事。ストレートな言葉で綴られた歌詞の中でも、この曲そのものを象徴するようなパンチラインとなっている。「ここに」にはakebonoというバンドの「本気」が凝縮されている。「本気」だからこそakebonoの曲に、そのサウンドに「耳を傾けずにいられないのだ。
文・伊藤亜希