『Eggsレコメンライブ + 10th Anniversary tour』の札幌編が、2025年8月2日に北海道・札幌PLANTにて行われた。『Eggsレコメンライブ+』は、アーティストを発掘し早耳音楽リスナーにレコメンドするライブイベント『Eggsレコメンライブ』から派生したライブイベントで、Eggs10周年を記念して札幌・名古屋・大阪・福岡の全国4都市で開催。出演するのは各地域に所縁のあるアーティストや、今、知ってほしいアーティストだ。本レポートでは、The Finks、お願いジョンソン聴いてくれ、タデクイ、oh!! 真珠s、テレビ大陸音頭の5組が出演した札幌編の模様をレポートする。
高校生バンド、The Finks(ザフィンクス)が鳴らしたグランジロック
オープニングアクトは札幌発の高校生3ピースバンド、The Finksだ。ブルーのライトに照らされた暗がりのステージに3人が登場。ギターとベースの不穏なノイズが鳴り響いた後に骨太なサウンドでこの日の幕が開ける。強く歪んだギター、重厚にうねるベース、タイトに変則ビートを打つドラムに加え、がなり声で叫ぶようなボーカル。グランジ全開の熱を帯びたサウンドに、オーディエンスは飛び跳ねるように体を揺らす。「Eggs10周年の記念で全国4カ所をまわるツアーのオープニングアクトに誘っていただいてありがとうございます」とチバ(Vo./Gt.)が御礼を伝える。1980年代から90年代初頭に隆盛したグランジロック中心の楽曲を披露するThe Finksは、現在高校3年生。受験に専念するため、この日が年内最後のライブになるという。「また来年会いましょう。最後に12月に出す新曲を。SNSのチェックお願いします」と活動休止中に音源をリリースすることを告げ、穏やかなミディアムチューンの新曲を披露した。彼らは「また来年戻ってくるので、来年も(ライブに)来てほしいです」とオーディエンスと再会を約束をし、それぞれの挑戦のステージに旅立った。
setlist
- 01.wraith
- 02.phenomenon
- 03.No.7
- 04.R.I.D
- 05.moonlight
エモーショナルな楽曲で心を揺さぶった、お願いジョンソン聴いてくれ
札幌の音楽系専門学校で結成された4ピースバンド、お願いジョンソン聴いてくれ。1曲目は、2025年3月リリースの1stシングル「天国」だ。なだらかなイントロから始まり、サビでは力強さを一気に爆発。フロアの熱気が次第に高まっていく。「Eggs10周年おめでとうございます。10周年の祝いのライブに呼んでもらえて本当に嬉しい」と喜びの言葉を述べた後、「お客さんがめっちゃ多くて有名人になった気分です(笑)」とジョークを飛ばし、オーディエンスの笑いを誘う。この日初披露となる新曲「愛のほつれ」は、静寂の中から徐々に感情が高まるかのように、次第に歌声とサウンドがエネルギッシュになっていく。情熱的に緩急をつけた楽曲は、彼らの魅力のひとつだろう。終盤になると、石崎聖五(Vo./Gt.)がおもむろにTシャツを脱ぎ、上半身をさらけ出す。そして石崎は「ある場所で弾き語りの人の歌に感動して泣いてしまった。そんな曲を作りたいと思って作った曲」と言い、ラストの「タイムマシン」をプレイ。感情を爆発させたサウンドで、オーディエンスの心を高鳴らせた。
setlist
- 01.天国
- 02.ゴッホ
- 03.愛の解れ
- 04.タイムマシーン
幻想的なサウンドでオーディエンスを特別な世界へ誘ったタデクイ
2021年6月に幼馴染によって結成された釧路市阿寒町出身の3ピースバンド、タデクイ。「こんばんは、タデクイと申します。よろしくお願いします」と丁寧にオーディエンスに挨拶をし、ジャジーな装いの「レッテル」を披露。艶やかで伸びやかな歌声が場内に響き渡る。続く「サナギ」では、憂いを帯びたサウンドが、夜をほのかに照らす雪景色のような幻想的な世界観を醸し出す。オーディエンスも左右に体を揺らしながら、タデクイのサウンドに惹き込まれているようだ。「Eggs10周年なんですね。10歳といったらなんでしょうか。何だろう…?」と自分で自分に問いかけた質問に答えられない下倉幹人(Vo./Gt.)は、「中森明菜みたいなMCだって、よく言われる(笑)」とオーディエンスを笑わせる一面も。「横揺れ縦揺れOKみたいな気持ちでいきましょう」とオーディエンスに自由に楽しんでほしいという気持ちを伝え、グルーヴィーでリズミカルな「灯台」「海に来て」を披露。中毒性のある歌声とバンドサウンドを魅せた彼らは、心地よいグルーブを作り出し、終始オーディエンスを魅了していた。
setlist
- 01. レッテル
- 02. サナギ
- 03. 灯台
- 04. 海に来て
ジャンルの垣根を越えダンスチューンでフロアを躍らせたoh!! 真珠s(オーパールズ)
2024年に東京を拠点に活動を開始した4ピースミクスチャーバンド、oh!! 真珠s。「ワン、ツー、スリー!」のカウントから演奏を開始。サングラスをかけた平賀新大(Vo./Gt.)が「遊びましょう、よろしくお願いします」とオーディエンスに呼びかける。ダンサブルなナンバーを浴びたフロアは、のっけからノリノリの様子だ。「素敵な場所にお迎えいただきありがとうございます。我々はジャンルを絞らず、好きな音楽をみんなと共有したくて日々曲を作っています。後半戦も多種多様な音楽で飽きさせません」と自分達の楽曲の持ち味を紹介。ロックやファンクを織り交ぜたミクスチャーなポップサウンドに、お経のような早口語りやラップをのせた楽曲は、実に痛快。Eggsでも配信中のダンスチューン「真珠」「WTS」では、サウンドの1部と化した甲高いボーカルとアッパーな演奏にフロアからハンズクラップが起こる。ラストは、メロディアスなミディアムチューン「誰も知らない」。パーティー空間とは打って変わって、甘く心地よいボーカルとシンプルなサウンドをしっかり聴かせるoh!! 真珠s。彼らの高い演奏スキルが存分に伝わってくる1曲で締め、ステージを後にした。
setlist
- 01. Bad communication!!
- 02. かんせいがたりない
- 03. SATORI
- 04. 天国てれびくん
- 05. 真珠
- 06. ハイカラエンド
- 07. WTS
- 08. 誰も知らない
唯一無二のパフォーマンスで圧巻のステージを披露したテレビ大陸音頭(テレビタイリクオンド)
トリを飾るのは札幌を拠点に活動するテレビ大陸音頭だ。「俺に真実を教えてくれ!!」が、2024年6月のSpotify国内バイラルチャートで1位にランクインしてから3週連続で1位を獲得。その約1年後には『FUJI ROCK FESTIVAL’25』の「ROOKIE A GO-GO」への出演を果たした。目まぐるしい勢いで知名度を高めていくテレビ大陸音頭は、今最も注目すべき若手バンドのひとつである。SEで「紅蓮華」(LiSA)が流れると、早くも歓声とハンズアップが起こる場内。メンバーがステージに姿を現す。ものものしいプログレッシブなサウンドが鳴り響き、千代谷竜司(Vo./Gt.)のシャウトが響く。ギターを持った千代谷が叫んだのは、「エンジン全開!コクピットOK!We are 機動戦士ガンダム、発進!」。はて、何のことだろうと考えたのも束の間。<死んだら終わり、人生は>と繰り返し叫ぶ様に、度肝を抜かれた。奇天烈なパフォーマンスを魅せながらも、ひょうひょうとした立ち振る舞いでノイジーな楽曲を立て続けに演奏していくテレビ大陸音頭。USロックを思わせる「夜について」では、同期音混じりのアーバンなサウンドをしっとりと聴かせた。本編ラストは「俺に真実を教えてくれ!!」。4人が全身全霊で音を鳴らす中、フロアから歓声やハンズアップがぶち上がる。一旦退場した4人は、アンコールの拍手に応えて再登場。シャウトと不協和音が入り乱れ、アウトロでは千代谷はステージを激しく動き回りながらギターを頭上で回転させまくるカオスな状態に。唯一無二のエキセントリックなパフォーマンスで圧巻のステージを披露し、オーディエンスを歓喜させた。
setlist
- 01. 異次元の暮らし
- 02. 死んだら終わり人生は
- 03. minutemen
- 04. ブルー
- 05. 衝動はいいもんだ
- 06. 新曲
- 07. 夜について
- 08. こんちくわ
- 09. 君は本当にPUREだね
- 10. おれに真実を教えてくれ!!
北海道に所縁のあるアーティストを中心に、札幌の夜を熱帯夜に変えたこの日。北海道で生まれ、北海道で育った良き音楽たちに出会うことができた。『Eggsレコメンライブ + 10th Anniversary tour』は、2026年3月までの間に福岡、名古屋、大阪でも開催される。ぜひとも地方特有の音楽を味わいに行ってほしい。
執筆・取材:橋本恵理子
撮影:希良々









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