mouse on the keys world tour 日記|8日目「ボルドーへの道、文化を育む仕組みと「今という未来」について」

mouse on the keys world tour 日記|8日目「ボルドーへの道、文化を育む仕組みと「今という未来」について」

2026/03/12

モン=ド=マルサンから一路ボルドーへ。

2025年11月8日(土) ボルドーへ移動。再会のTOTORROと熱い一夜!

2025年11月8日(土) 昨晩の打ち上げで、H.Ü.L.K. EXPのエンジニアたちからフランスのアーティストに対する手厚い公的扶助制度について聞き、驚きと共に、ある種の羨望が込み上げた。特に「アンテルミッタン・デュ・スペクタクル(intermittents du spectacle)」という制度の存在は大きい。年間507時間の就労を条件に、仕事のない期間も失業保険が活動を支える。もちろん、フランスのこの制度もレギュレーションは厳格だし、日本にもJLOD(コンテンツグローバル需要創出促進事業)などの助成金は存在する。しかし、一定の活動規模を持つ者であれば、コマーシャルな成功に縛られずとも表現に専念できるフランスの環境は、長期的な視点での文化創造において、日本より遥かに深い寄与をしていると感じざるを得ない。 

ニースでのアンテルミッタン・デュ・スペクタクルによるデモの様子 https://www.youtube.com/watch?v=4pMwlger0bI  

アンテルミッタン制度が、幾多の闘争を経て維持されてきた歴史があることは言うまでもありません。この映像は、2020年のパンデミックにより文化活動が完全に停止した際に行われたデモの様子を捉えたものです。活動不能な期間における失業保険の特例延長、いわゆる「白い年(année blanche)」を求める切実な訴えが記録されています。

視点を変えれば、日本やアメリカ、イギリスのような、よりシビアな「マネタイズ」を要求される風土。この過酷な環境こそが、逆に世界を席巻するユニバーサルなコンテンツを生む土壌となっているのではないかとも思える。市場という荒波に揉まれる中で、表現はより鋭利に、より広範へと届く力を獲得していく。 

いずれにせよ、我々作家やエンジニアにとって最も重要なのは、活動とアウトプットを「継続」することだ。文化への寄与は、継続の先にしか存在しない。そのためには運転資金が必要であり、見向きもされないニッチな表現の中にも、次世代のスタンダードとなる種が眠っている可能性があるはずだ。  

振り返れば、右も左も分からない状態で、自らライブハウスで活動を始め、今こうして海を越え、ボルドーへと向かっていることが不思議でならない。人との接触を恐れず、未経験の事柄に挑むことが、今という未来を作ったのだとしみじみ思う。 

14:00 pm

モン=ド=マルサンからボルドーまでは約140km、移動時間は約2時間と、昨日と同様にスムーズな行程で、身体への負担が少ないのは本当にありがたい。 

16:00 pm

会場である「Le Rocher de Palmer」に到着した。 

300人キャパと聞いたが、見た感じ500人は入る天井も高い大きな会場だ。 

フランスのバンドTOTORROとは、今ツアー2回目の対バン。TOTORROは、先日のライブに比べて、入念なリハーサルを行っていた。フランスにおいてボルドーは、重要な拠点なのだろう。 

mouse on the keysもリハーサルを終え、私は、オープンを待つ誰もいない会場を1人見ながら、何か熱いものが込み上げてきた。 

昨日のモン=ド=マルサンのLe Café Music同様、会場スタッフとアーティストが一緒に、会場内の食堂でケイタリングを食する。国からの手厚い保護を受け、地域の文化発信拠点となり、近隣住民への娯楽や職を提供し、箱物行政がポジティブに機能しているようだ。見たところ、年齢の高い人々の比率が多いように思う。若い世代も若干混じっているが、圧倒的に30〜40代以上のスタッフが多いように感じる。 

以前フランスのドキュメンタリーで引き篭もり問題を扱っているものがあったが、インターネットが主流の時代にあって、世代間断絶は、この国にも広がっていると思われる。 

我々、motkチームは、今年のWorld tour後半戦も折り返し地点に差し掛かってきた。この数回のライブの積み重ねと相まって、理想的なライブパフォーマンスができたと思う。TOTORROも、入念なリハーサルを行なっていた通り圧巻のライブであった。観客との一体感も感じられ、彼らがこの地の公演を大事に考えていることもわかった。 

mouse on the keysTOTORROの良い対バン企画であった。物販も大盛況。 

ツアーでは、少数精鋭の5人で活動しているが、マネージャーの金谷くんやPAの山下くんの存在が、我々がパフォーマンスに集中できることに感謝。 

ホテルに戻り、マネージャーとロビーで談笑していたところ、TOTORROのメンバーも加わり、2回と短い共演だったが、お互いを労い、ワインなど酒を酌み交わした。

mouse on the keys at Le Rocher de Palmer, Bordeaux, France(2025年11月8日)SET LIST

  1. 01. The Dawn 
  2. 02. Completed Nihilism 
  3. 03. Spectres de Mouse 
  4. 04. Seiren 
  5. 05. 最後の晩餐 
  6. 06. Womb 
  7. 07. Fail Better 
  8. 08. Raumkrankheit 
  9. 09. Ouroboros 
  10. 10. Praxis 
  11. 11. Emergence 
  12. 12. Earache 
  13. 13. Toccatina 

■スタッフクレジット
執筆:川﨑昭(Dr. / Leader)
撮影:新留大介(Key)、白枝匠充(Key)、川﨑昭、金谷佳弘