くるまざわさんのお宅ですか

齊藤信幸
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歌詞

作詞:齊藤信幸

作曲:齊藤信幸

くるまざわさんのお宅ですか 仕事へ向かう途中見かけた葬儀の案内板 霧雨に滲んでいる苗字に聞き覚えがあった 及川なんてそう珍しい苗字でもないけれど 送られて行くのはあの人のように思えて立ち止る あれは10年前 ちょうどここに越して来た頃 同じ人からの間違い電話が続いたことがある きまって夕食時 かなり年配の女性が 申し訳なさそうに電話をかけてきた 「もしもし 及川という者ですが くるまざわさんのお宅ですか」 「いいえ ちがいます お間違えのようですね  最近こちらに越してきた者です」 彼女は恐縮して間違いを詫びて  そのくせ3日もすればまたかけてくるのだった そんなことが一月ばかり続いただろうか やがて彼女からの電話は途絶えた だから彼女のことはもうすっかり忘れていた 不意に先月また電話があるまでは はじめは何を言っているのかよく聞き取れなかった 10年振りに聞く彼女の声はとても老いていた しわがれた声が途切れ途切れに細く伝わる 私はテレビを消して受話器を強く耳にあてる 10年前と全く同じ言葉が聞こえる まるであれから時間が動いていないみたいに 驚いて何も言えず 黙ったままの私に 彼女はほっとしたように話し始めた 「もしもし 及川という者ですが くるまざわさんのお宅ですね  ごめんなさい 本当にごめんなさい  ようやくあなたにお詫びができました つらい思いをさせてしまいましたね だけどあのときは もうああする他 なかった 私を 私を許してくださいますか」と 泣きながら何かを詫びる彼女に 私は思わず言っていた 「わかりました」 「よかった」 電話は切れた どんな重荷を抱え込んで 年を重ねてきたのですか そんなに求めた人の声なのかどうかも わからなくなってしまってさえ それでも はずみで言った機械的な言葉で 何をそんなに許してほしかったのですか 人は何て悲しい生き物だろう 見えないものを見つめてしか生きていけない 道行く人よ あなたの心は今 笑っていますか 泣いていますか そんなこと考えていると 遅れてしまう 人並みに乗り また 歩き出す もしもし及川という者ですが くるまざわさんのお宅ですか

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shea

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