12月7日、土曜日。今年15周年となる師走の恒例サーキットイベント、THEラブ人間決起集会『下北沢にて'24』が東京・下北沢20会場にて開催された。本年で4回目のタッグとなる“下北沢にて×Eggsコラボステージ”下北沢WAVERの1日に密着し、9アーティストのレポートをお届けする。
ピアノとストリングスで構成されたSEで登場。“君も僕らも最低で最悪だ”と震える声で吐露した「光視」で、この日の口火を切ったのは『下北沢にて'24』Eggsステージオープニングアクトオーディションでグランプリを獲得したトキワの森。ディストーションとクリーンな音色、相反する音像の底で上行形の鬼気迫るコード進行がうごめき、ハウリングをコントロールしながら激情を昇華していく。「流星になれ」では、感情の昂りのあまり前川ぺそ(Vo,/Gt.)とタナカサイト(Ba.)が体をぶつけるようなパフォーマンスを見せ、「あんしん」では“狂っている” “連絡してよ一緒に死のう”のリフレインが実に痛々しく、一気にテンポアップした赤く激しく点滅するステージで最高潮を迎えた。30分で5曲。1曲1曲を大事に紡いだトキワの森。グランプリ獲得の報を受けて一目置いていたが、やはりただ者ではなかった。
イベントジングルの後に、聴こえてきたのはクセになるボーカルだ。この日が今年最初で最後のライブというヒトリヨブランコ。心温まるオープニングナンバー「百年ままごと」に対して、続く最新曲「不気味」ではコロコロ転がるシロフォンのような同期音がファニーに響き、“流行りって不気味/流行ってるからBoogie me”の言葉遊びも光った。ムラカミカエデ(Vo.)はハンドマイク片手に全身でステップを踏んでいく。「イエローサブマリン」では、傘原けえ(Gt.)とあんどうけいた(Ba.)が、それぞれステージ上手と下手で対照的なプレイングを見せた。「早い時間から観に来てくれてありがとうございました」と来年3月の下北沢近道ワンマンの告知を挟んで「ナイトライトトーキョー」をプレイし、持ち時間30分のうち約7分を残して終幕。その風格漂う気だるさから今後が楽しみなバンドだ。
往年のファンクナンバーであるEarth, Wind & Fire「September」でステージに登場したのは、札幌のディスコロックバンド・nene Is.。名刺代わりの「ELICA SUMMER」、続いて「DANCE FLOOR」をドロップするとミラーボールが回り出し、エメラルドグリーンのステージ照明が真っ昼間の下北沢でネオンサインのように灯る。ディスコナンバーゆえにRIKU TANIGUCHI(Ba.)のスラップ奏法によるベースラインが気持ち良く、剛(Dr.)の繰り出す軽快な4つ打ちビートと組み合わさると思わず体を揺らしてしまう。雪景色の情景描写が鮮やかな「汗も雪となる」から、黒サングラスのKT(Vo./Gt.)とコト・チャン(Gt.)による“真っ逆さまに”というコーラスに誘われるように「サイケガール」「テレフォンガール」の連投で、客席は完全にダンスフロア状態。ラストは「ONLY YOU」で「またどこかでお会いしましょう!」と再会を約束したエンディングとなった。
3ピースバンドあの街の水色は「clover」で爽やかに幕開け。もこ(Dr./Cho.)のタイトなドラムに、たがみ(Ba.)の躍動的なベース、変幻自在なギターと突き抜けるボーカルのらう(Gt./Vo.)。このトライアングルから放たれる彼女たちのサウンドはスリーピースとは思えないほど分厚く鳴り響く。「つきのよる」ではらうともこのコーラスが絡み合い、その効果は終盤に増幅。「シモニテに出演できてすごく嬉しいです。名前だけでも覚えて帰ってください」と思いを述べて演奏された「suisen」では、薄暗い照明が灯されたステージにスモークが焚かれ、水面から海底の奥底へと沈んでいくような靄がかった心情が、ずっしりと重いプレイとも相まって見事に演出されていた。夏の終わりのような寂しさを感じてしまうほど濃密な30分間だった。
のっけからハイテンションなthe Bottomz。「愛はどこだ!!」では土台となるクラーベ(註:ラテンアメリカ音楽で用いられるリズムパターン)のリズムをクラベス、シェイカー、ボンゴを奏でて表現し、南国のターザンを彷彿とさせる曾我(Vo./Gt.)の雄叫びも飛び出すなど異国情緒溢れるオープニング。続く「落ち星」では、ワウの効いたファンキーなギターリフと、黒崎(Dr.)による変拍子も自在に操る小刻みなビートでフロアを誘い、喉をかっぴらいて鼓膜に訴えかけてくるボーカルも絶品。「本当にあなたは変わり者」とフロアに最大限の賛辞を送り、緩急の激しい展開にどっぷり浸れる「Sugar」をプレイ。「空蝉」ではスウィングなビートで始まったかと思いきや時折ハードロックの様相を呈するなど、様々な景色を見せてくれる。即興性の高さで鮮烈な印象を残してステージをあとにした。
円陣を組んでスタートしたのはThe Gentle Flower.。金子大伸(Vo./Gt.)が「下北沢、楽しんでるかー!」と発破をかけて「スペースダイバー」へ突入。マイナーキーで駆け抜けた「片足の少年」では「俺たちひとりじゃねえよな!」と強く呼びかけ、その思いを体現するかのように金子と森下祥伍(Gt.)がステージ最前線でギターをかき鳴らす。初めて観る人を挙手させると「うわー、運が悪いね。ハマっちゃうよ」と言ってのける強気な一幕もありつつ、「出会ってくれたことに感謝してますし、歌に変えて、愛にして返そうと思ってますので」としっかり寄り添うことを忘れないのが彼らの真骨頂。「あなたの人生変えるつもりでラスト1曲歌うわ」と告げて演奏された「有名になったら」は、フロアのひとりひとりの心を掴んで離さなかった。
大貫妙子「じゃじゃ馬娘」を入場SEに登場したのは、今年活動開始したばかりのoh!! 真珠s。「IKAROS」のイントロでは「ここから先はダンスタイムが始まるから」と平賀新大(Vo./Gt,/Syn.)がハンドマイクを握り、曲中で思わず「やべえ楽しい!」と口にするほどの熱狂ぶり。対して、「真珠」では場末の流しのような歌心をこれでもかと効かせ、曲が進むにつれてフロアを虜にしていく。MCで平賀は「数あるバンドの中から俺らを選んでくれたあなたたちはハイセンスピーポーなので」と満足気な表情を浮かべ、意気揚々と「WTS」をドロップすると、ミラーボールに照らされながら至るところでハンズアップが起こった。シンセサイザーのフレーズにトリップしてしまいそうな「誰も知らない」を演奏し終えると足早にステージを去った。
「少年のようにです。よろしくお願いしまーす」と名乗るやいなや田中雄大(Vo./Gt.)が2度ジャンプし、「そばにいて」で軽快にスタートしたのは3ピースバンド、少年のように。1曲目の終盤の爆速のままに「ゆうれい」になだれ込むと、その等身大のプレイングに勢い余って田中のギターの弦が切れてしまい、吉田マロニー(Ba.)がトークでつなぐまさかの展開に。弦を張り替え「生きていたい」で再開すると、夕暮れを連想させるオレンジ色のライトを浴びたミディアルバラード「想う日々」では“君がいてくれるなら/二人で笑い合おう”とフロアを抱き締めた。「最後の1曲歌って帰ります」と告げて奏でられたラストナンバー「黄色の街」では再び田中の弦が切れてしまったが、フロアの後押しを心の支えにアッパーな初期衝動のままに走り切った。
毛皮のマリーズ「ダンデライオン」を入場SEにこの日、下北沢WAVERのトリを飾ったのは、今年改名し新体制で再始動したばかりのチロ。「雨上がり東京は」「アンナ」と立て続けに爆音をお見舞いし、日下詠太(Vo./Gt.)はステージ前方のスピーカーに片足を乗せて気合の入りようを見せつける。「なにかと思い出がある」と語った“シモニテ”に「チロ始動1発目の曲を」と「新解放区」を捧げ、フロアからは拳が突き上がった。バラード「汽笛の音」ではスモークが焚かれたステージでひんやりと冷たい風が吹き、聴いているこちらも人肌恋しくなってくる。ラストは2ビートで疾走するパンクナンバー「pink!」で“愛されたい愛されたい”と絶唱し、想定外のアンコールが起こるとこの日2度目の「雨上がり東京は」で盛大に締め括った。
世間的には年の瀬で慌ただしい中、晴れた土曜日の下北沢には観光客も多く、そこだけゆっくりと時間が流れているようだった。15周年の節目を迎えた『下北沢にて'24』。148組のジャンルレスなアーティストと7組のお笑い芸人が集結し、各会場で熱演を繰り広げた1日であった。
写真・緒車寿一/文・榮谷悠紀
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