仏ツアー初戦の地トゥールーズへ。夜の街に想いを馳せる。
2025年11月5日(水) 11:00
中継地シャトールーを後にし、今回のフランスツアー初戦の地となるトゥールーズへ向かう。
シャトールーからトゥールーズまでは約400km。日本で例えるなら、東京・用賀インターから滋賀の米原ジャンクションまでを一気に走る計算だ。

昨日より100km長い行程に身が引き締まるが、実は頭の片隅で別の不安が蠢いている。来る11月10日(月)には、1日で700kmの移動が控えているのだ。車で700kmといえば、東京から岡山と広島の県境(福山市あたり)まで行くに等しい。果たして無事に辿り着けるのか(笑)。


我々は再びスプリンターを走らせる。車窓の景色は、徐々に北フランスの厳粛な雰囲気から、南仏特有の開放的な光景へと変わっていく。緯度が下がるにつれ、雲の切れ間から差し込む陽光が強くなるのを感じる。
道中、SAでエスプレッソを流し込みながら、今日の目的地に想いを馳せる。
15:00 pm
フランス・トゥールーズに到着。

街に入った瞬間、視界が鮮やかに色づいた。
トゥールーズは、その名の通り「ラ・ヴィル・ローズ (La Ville Rose) =バラ色の街」と呼ばれている。夕陽を浴びて赤く染まるレンガ造りの街並みは、どこかロマンチックで、それでいて歴史の重みを感じさせる。

この美しい景観には、少しばかり皮肉な歴史がある。15世紀の大火の後、耐火性を求めて採用されたのが、この素焼きのレンガだったという。かつてこの街は、青い染料「パステル」の交易で「青い金」と呼ばれるほどの巨万の富を築いた。その富が、豪奢なルネサンス様式の邸宅(オテル・パルティキュリエ)を生み出し、今の美しい景観の基礎となっている。
また、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の重要な中継地であるサン・セルナン大聖堂や、17世紀に建設されたミディ運河など、ユネスコ世界遺産が街の至る所に息づいている。
その一方で、ここはエアバス社の本社を擁するヨーロッパ航空宇宙産業の中心地でもあり、パリに次ぐ学生都市でもある。
歴史的な重厚感と最先端の科学技術、そして学生たちの活気が混じり合う、不思議な引力を持った街だ。
17:00 pm
ホテルにチェックインし、しばしの休息をとる。移動の疲れを少し癒してから、メンバー全員で夜のトゥールーズの街へ繰り出した。
日が落ちると、この街はまた別の顔を見せる。

石畳の路地と、昼間は「バラ色」だった煉瓦造りの建物がライトアップされ、闇の中に幻想的に浮かび上がっている。その光景は、息を呑むほど美しい。
「本当に、バンドをやっていて良かった」
ふと、心からそう思った。音楽が、我々をこうして異国の地へと連れて行ってくれるのだ。コロナ禍以降、世界は急速にバーチャルな繋がりを中心とするようになった気がする。だが、こうして泥臭くライブバンドとして活動し、足を運んできたからこそ、肉眼で捉えられる「景色」がある。インターネットを駆使して世界中に自分たちの音楽を発信し、それをきっかけに現地へ赴き、国境を越えて人々の前でプレイする。デジタルとフィジカル、その両方が噛み合った素晴らしい時代に生きているのだと、夜のトゥールーズの街角で改めて実感した。

19:00 pm
長距離移動の心地よい疲労感と、明日のライブへの思いを抱えながら地元のビストロへ入る。

本場のフレンチフードに舌鼓を打ち、ビールとワインで乾いた喉を潤す至福の時間だ。明日のライブが、今はただただ楽しみだ。
執筆:川﨑昭(Dr. / Leader)
撮影:新留大介(Key)、川﨑昭、金谷佳弘
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