俺は青森生まれサンプリング育ち、録れそうな機械は大体友達

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Text:飛内将大

BBQ。花火。海。

今年もそんな夏を象徴するものに一切触れることがないまま、インドアな生活を送っている。せめてこれだけはと思い立ち、三軒茶屋のかき氷屋に車を走らせたら、その道中1990年生まれのご老体マイカーのボンネットから煙がモクモクと上がり緊急停止。結局、かき氷屋にはたどり着けぬままレッカー移動に。車が爆発して吹っ飛んでいたかも、というスリリングな体験はこの夏のハイライトとなった。

先日、その爆発寸前?の車を、数時間で見事直してくれた“かかりつけ医”である車屋のマスターと一緒に、Dragon Ashのライブを観に行ってきた。

Dragon Ashと言えば、僕らが10代の頃からのヒーローだった。ROCKやHIP HOP、Drum’n’bassなど、ありとあらゆる音楽性をミックスした独自のバンドサウンド。それでいて、キャッチーなメロディーや言葉のフレーズ。これらが若者の心を鷲掴みにしてきたわけだが、かく言う僕も、心を鷲掴みにされた若者の一人で、高校時代は邦楽洋楽、ジャンルを問わず様々なコピーバンドをやったが、Dragon Ashのコピーバンドもやっていた。

そんなDragon Ashは、当時としてはまだ珍しかったスクラッチDJを、早くからメンバーとして取り入れ、サンプリングを駆使するバンドのひとつでもある。

その中から1999年にオリコン1位を獲得した、この1曲。

Dragon Ash - Grateful Days

【Listen♪】

当時Dragon Ashは、初期のロックバンド的要素が薄くなり、HIP HOPに傾倒した作品のリリースが続いていた。そんな中、この楽曲を耳にした高校生の僕は、思わず目尻に3本シワを増やすほどニヤけ尽くした。

イントロから止めどなく鳴り続ける、「かき氷を勢いよく食べた時の頭痛のような」ギターの音色。ビリーだ。ビリー・コーガンがそこにいる。

The Smashing Pumpkins - Today

アメリカのオルタナティヴ・ロック界で、カリスマ的な人気を誇るバンドThe Smashing Pumpkins。彼らの名曲「Today」のギターフレーズを、全編に敷き詰めた上でライムを刻む。そこから滲み出るロックの精神にニヤついたのだ。何を隠そう、僕は生粋のスマパンクレイジーであり、12の頃から愛している。だから「Today」を知らない人にはHIP HOPでも、「Today」を愛する人にはめちゃめちゃROCKなのだ。Dragon AshのThe Smashing Pumpkinsへのリスペクトを感じ、ニヤけざるを得ない1曲だった。


Grateful Daysのように、原曲を知っていれば「あー!」となるサンプリング楽曲は多数あるのだが、Daft Punk「Harder, Better, Faster, Stronger」には衝撃を受けた。

Daft Punk - Harder, Better, Faster, Stronger

この楽曲に出会った時は、原曲のことなど何も知らず、ただただかっこいいとしか思っていなかった。しかし、数年後のある日、立ち寄ったレコード店で偶然流れていたこの曲を聴いてパニックになる。

Edwin Birdsong - Cola Bottle Baby

ちょっと待て、そのまんまじゃないか。歌が人間からロボットになっただけで、コラDaft Punk。何をした!

サンプリングという文化に疎かった当時の僕には、もしかしたらこれは違法行為なのではないか、という思いが頭を渦巻いた。しかし、このサンプリング、関係各所への許諾や然るべき法的手続きを取れば、リリースも可能な音楽表現のひとつなのだ。

Edwin Birdsongは、それほど名の知れたアーティストではない。だが、Daft Punkがサンプリングして新しい曲にリメイクしたことで、2009年のグラミー賞をも獲得するほど、世界中の人間を踊らせる楽曲へと進化を遂げた。Daft Punkは他の楽曲でも、70’s~80’sディスコシーンの音楽をサンプリング、リスペクトを感じるオマージュ的な作品を多数送り出している。


逆に原曲が好きで気を失うまで毎日聴いている人間ですら、サンプリングに気づかないほどさりげない使い方をしている楽曲もある。Bruno Marsの「24K magic」をサンプリングした「LOYALTY.」が話題となっている、Kendrick Lamarのアルバム「DAMN.」。 だが、実はこのアルバムに入っている「XXX.」もスゴい。

Kendrick Lamar feat. U2 - XXX.

【Listen♪】

0:29からチュルキュルキュッキュッキュッキュッパァー!っていう音が何度か聴こえるはずだ。この「パァー!」をよく聴いてほしい。場所によってはキュルキュッ「パァー!」だったり、キュキュ「パァー!」だったりするが、細かいことは気にせず、「パァー!」だけを耳に刷り込ませてほしい。そして、このゲラッパおじさんの曲を聴いていただきたい。

James Brown - Get Up Offa That Thing

FUNKの帝王James Brownによるゴキゲンなファンクチューンだが、この曲の0:20あたりに出てくるこれが、まさにあの「パァー!」なのである。Kendrick Lamarは世の中にありふれた「ポー」や「ピー」ではなく、James Brownの「パァ!パァー!」を「XXX.」にエッセンスとして取り入れたのだ。 また、この他にも、Young-Holt Unlimited 「Wah Wah Man」やFoals 「Fugue」もサンプリングされている。


サンプリング曲のネタ元となっている曲を探す便利なサイトも存在しているので、自分で元ネタを探ったり、なぜこの曲のこの部分をサンプリングをしたのか、アーティストの心情や背景を探ったり想像したりしながらあらためて聴いていくと、これまでとはまた違った音楽の表情を感じることができるし、昔聴いていた音楽と新しく出会った音楽の繋がりを見つけた瞬間は、何事にも代え難い高揚感をも味わえる。

だが僕は今、何よりもかき氷を味わいたい。

バックナンバーは【コチラ】から

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飛内将大
音楽プロデューサー・作曲家・編曲家。ギター、キーボード、ドラム、DJなど様々な楽器遍歴を持ちあらゆるジャンルに対応出来るオールラウンダー。

小学校6年生頃から作曲を始め、19歳からトラックメーカーリミキサーとしてのキャリアをスタート。2007年agehaspringsに加入。YUKI、木村カエラ、元気ロケッツ、Aimerなど多岐に渡るアーティストへの楽曲提供・アレンジを手掛ける。数多くのTV-CM、広告キャンペーン、映画などの映像コンテンツ作品にも音楽で参加している。

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agehasprings Open Lab.
【agehasprings】is a hit making creators' lab in Japan. 玉井健二 蔦谷好位置 田中ユウスケ 田中隼人 百田留衣 and many more

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