リフの惑星、再始動インタビュー。ひとり残された孤高のロックシンガーはどこへ向かっていくのか。

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4月24日に開催されたワンマンライブをもって3人のメンバーが脱退し、今後の動向が注目されていたロックバンド・リフの惑星が、7月19日のライブで新たな船出を迎える。
大きな転換期を迎える今、複雑な心境の中で「リフの惑星」の名前を残し、ブレずに活動継続を選んだ真意とは。

ひとり残されたメンバー、オガタリョウ(Vo/Gt)へのロングインタビューで、彼自身が救われたという新曲と、なぜロックバンドを続けるのか、赤裸々に語ってくれた。



文:栄谷悠紀
写真:ゆうばひかり



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――ぜひお願いします(笑)。ほかにも少し振り返ってもらいたいのが、東放学園の学生さんたちが制作したボイスドラマについて。リフの惑星の楽曲“HELLO”“STARTING OVER”からインスパイアされて制作されたということで。

(オガタ):曲を作ってる側からすると、自分の曲が自分の手を離れて、誰かが作り上げるものに使われるっていうのが初めてだったので、すごくうれしかったですね。学生さんと何度かミーティングさせてもらったりもして。

――セリフの中で、楽曲のメッセージをすごく汲んでくれていますよね。

(オガタ):そうなんですよ。びっくりしました。自分が思ってた以上に、この曲ってこういうこと歌ってたんだって気づかされる瞬間もあったり。

――『自分の役目』のラストにある「たとえ嫌われたとしても、それがおれの役目だ。震えて待ってろよ、おまえら!」というセリフ、これオガタさんが言っててもおかしくないですよね(笑)。

【ボイスドラマ】自分の役目

(オガタ):そうそう。いつか言わなきゃいけないセリフを先に言われました。それも書いてくれた本人に伝えましたけどね(笑)。

――完成版を聴いて、逆にオガタさんがインスパイアされたというか、リフの惑星の音楽の新たな可能性として感じたことってありますか?

(オガタ):どの作品もボイスドラマが終わるタイミングでいい感じに曲を流してもらって、ドラマとか映画とかアニメとか、作品じゃなくても日々の生活とか人生のエンドロールになるような曲をこれからも作りてえなと。人生のエンドロールって言っちゃうと暗すぎですけど(笑)。
 今まで音楽が持つ力とかあんまり意識したことなかったんですけど、自分の作る曲がそういうふうになる可能性も全然あるんだと思えたんで。それは今後の曲作りに影響すると思うし、“新しい世界”のような歌詞に引っ張られる曲ができたことにもつながるのかもしれないですね。

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――ここから改めて今後に向けた話を聞いていきたいんですけど、4月24日のLa.mamaのアンコールで、「どんなに見苦しくても、どんなにかっこ悪くても、リフの惑星というバンドを続けていくわたしの第1歩めのライブがあります」と7月19日のライブについて語られていました。
 何も決まっていないものの「リフの惑星」という名前を残して活動を続けようというところに強い決意を感じたんですが、そこにはどういった思いがあったんでしょうか?

(オガタ):リフの惑星を最初に始めるときも、ギターは2本欲しいなとかこういうベースが欲しいなっていうところからまずメンバーを集めたように、メンバーが集まってからバンドが始まるのが普通だと思うんですけど、脱退の話を聞くのとほぼ同時で“新しい世界”ができたので。バンドを続けるぞと思って曲を作ったんじゃなくて、あの曲が先にできたんです。
 悲しいとかこれからどうしようとか不安を感じる前に曲を作ることにすがるような感じで、あの曲に助けてもらって、救ってもらって。あの曲をいろんな人に届けなきゃいけないと思って、むしろバンドを続けることしか選択肢がなかった。新しくバンド名を考えようかな、新しくバンドを作ろうかなとか考えてこの形をとったというより、なるべくしてなったというか。

――そこに迷いはなかった?

(オガタ):迷いはなかったですね。メンバーと話したときも「リフの惑星、続けていくわ」って。誰かに相談したりもなかったです。

――その裏付けとして、先ほど話したMCの言葉があったんですよね。バンドの形とかメンバーを考える前に、まず第一に「リフの惑星を続ける」というブレない姿勢がオガタさんの中にあって、言うなればいつもどおりというか。

(オガタ):そうですね。バンドを止めたくないという意志があるというよりも、それが自然だった。言っていただいたみたいに、いつもどおりということで。

――なるほど。そのワンマンライブ後も弾き語りでライブに出演していますよね。リフの惑星の楽曲もやりつつ、カバー曲も演奏されていますが、カバー曲を選ぶ基準みたいなものってありますか?

(オガタ):どうだろう。歌いたいなって思う曲と、聴いていて最高だなって思う曲と、自分の中で微妙に違うんですよ。明確な線引きがあるわけじゃないんですけど、ナンバガ(NUMBER GIRL)の“透明少女”とかも弾き語りに向いてる曲ではないけど歌いたいなと思ってやってて。女性男性も関係ないし、考えたこともなかったですけど。
 でもひとりになって、バンドの中のボーカリストであり、作曲者であり、詞を書く人であり、フロントマンみたいな役割が今いい意味でない。何か背負わなきゃいけないものがないので、曲を聴いていて「あ、これ歌いたいな」って思うことが増えましたね。
 今までと違って、歌うことにフォーカスして日々生活を送るようになって、自分は歌う人なんだなっていう意識が強まってるなかで歌いたいと思える曲ですかね。フラカン(フラワーカンパニーズ)の“深夜高速”なんてまさにそうだし。

NUMBER GIRL - 透明少女

フラワーカンパニーズ 『深夜高速(25th Annivarsary Mix)』

――このタイミングで「自分は歌う人なんだ」と改めて自覚できたことは素敵なことですね。

(オガタ):もちろん歌詞も楽曲も素晴らしいし、バンドマンからしてあんな曲書けたらもうバンド終わってもいいくらいの曲ですけど、自分の中であの曲を選んだのは、歌詞がいいからとかじゃなくて、「なんかこの曲歌いたい」と感じたから歌った。というとかっこつけすぎですけど(笑)。

――ここから7月19日のライブ「(Just Like) Starting Over」に向かっていくわけですね。ライブタイトルはジョン・レノンから取ったものでしょうし、リフの惑星にも“STARTING OVER”という曲があります。
もちろん「再始動」という意味も込められているものだと思いますが、このタイミングでこのタイトルにした思いはどういったものなんでしょうか?

リフの惑星 『STARTING OVER』 Teaser

(オガタ):ジョン・レノンの声ってすげえいいなって最近ずっと思ってて。ジョン・レノンが「イエーイ」って言うだけでメッセージが詰まってるんですよ。ヒリついた感じとか切実さとかやるせなさとか、そういうものが詰まってる声に惹かれていて、タイトル考えなきゃってときに「これしかないな」と思いましたね。

(JUST LIKE) STARTING OVER. (Ultimate Mix, 2020) - John Lennon (official music video HD)

――どの曲もリフの惑星らしさってあると思いますけど、“STARTING OVER”は《愛されていたいから》と喉開きっぱなしで、あの声でひたすら叫んでるところがオガタさんにしか歌えない曲だと思ってて。“STARTING OVER”を作ったときのことって覚えてますか?

(オガタ):私生活でいろいろあってすげえ落ちてるとき、去年自分がいちばんどん底だったときに書いた曲で。自分が歌う意味とか、なんでバンドやってるんだろう、なんで音楽やってるんだろうって常に考えながら、はっきりとした答えがないままやってるんですけど。
 昔好きだった女の子に「なんでオガタってバンドやってんの?」って言われて、そんときはうまく答えられなかったんですけど、「きっとオガタは愛されたいからバンドやってんでしょ?」って笑われたのがずっと残ってて。それをたまたまふと思い出したことがあの曲のスタートですね。まんまひねらず持ってきたので、恥ずかしいところもあるんですけど。

――オガタさんが「あ、今この瞬間愛されてるな」と思うことって最近あったりします?

(オガタ):どうなんですかね……全然足りてないなって、もっと愛されたいなって思いますけどね(笑)。
 もちろん自分に対して歌ってるし、結果としてあの曲に自分も救われたんですけど、でも去年その歌詞を書いたときに比べると、目の前で聴いてくれている人とか、まだ見ない誰かに何かを伝えたいなという思いが強くなっていて。それが今歌ううえで原動力になってますね。

――前向きな原動力ですね。

(オガタ):あのときの感情が無くなってるわけじゃないですけど、この1年で、日記のように書いた自分の曲がもう一歩進んで、人に何かを届けたいっていう思いが出てきましたね。

――あと、先ほどジョン・レノンの声の話がありましたけど、オガタさんはご自身の声について「もっとこういう声だったらいいな」とか感じることはありますか?

(オガタ):それはもうめちゃくちゃ感じてますね。それこそ高校生の頃、「カート・コバーン(NIRVANA)みたいな声になりたい」とか、日本で言えばB’zの稲葉さんとか、ラルク(L'Arc〜en〜Ciel)のhydeさんとかに憧れたり、Oasisのリアム・ギャラガーの太くてばーっと広がる感じの声に憧れてはいましたけど。
 文化祭でコピバンやったときに、OasisやってもNIRVANAやってもそういう人たちの声になれないっていうところから自分のボーカルは始まってて。自分が歌うことの象徴というか、自分が歌ったらこうしかならないっていう。それは好き嫌いとかこういうふうに見られたいとかではなくて。高校生の頃って誰でも自分のこと好きになれない時期ってあるじゃないですか。だから自分の声が嫌になることもあったんですけど、もうこの声でしかいられないっていうのはありのままに受け入れてますね。

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――昨今のトレンドからすると、もっとやさしい耳ざわりの、聴きやすいボーカルのバンドが一気に武道館まで駆け上がって行ったりするのを目にしますけど、リフの惑星の曲って、メロディー以上に歌の力、オガタさんの声の力がひとつ大きな特徴で、曲のテーマが変わってもブレないですよね。そう言われてみてどうですか?

(オガタ):そうですね。たしかに自分が曲作るときに自分が歌う前提以外で作ったことがないので、あくまでも自分が歌うものとして、自分が歌いやすいメロディーラインの打算的な作り方ではなく、自分の声ががつんと鳴ってるものをイメージして作っていて。曲風ががらっと変わったとしてもその歌の感じは変わらないと思いますね。

――そう。それがすごく大きな武器としてあって、もしかしたら聴く人を選ぶかもしれないじゃないですか。
例えば尾崎世界観さん(クリープハイプ)のような特徴的な声で、でもちょっと好きになるとずぶずぶハマってしまうほどの魅力があるなと。

(オガタ):下北のDaisyBarにずっと出てるんですけど、あそこはクリープハイプがホームとしているハコで、尾崎世界観さんの影響もあるかもしれないですね。 “社会の窓”の歌詞にある《どうしてもあんな声しか出せないからあんな声で歌ってる~》《余計なお世話だよ》のあの感じも含めて、自分の声を決してポジティブには捉えてないけど、でもこんな声しか出せねえんだよ、何が悪いんだっていう開き直りというか。
 チバユウスケさん(The Birthday、ex. THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)っておそらく自分の声が持つかっこよさをわかってたと思うんですけど、おれの自分の声に対する感情は、チバユウスケさんよりは尾崎世界観さんのほうに近いですね。

クリープハイプ「社会の窓」

――うんうん。

(オガタ):もちろんもっときれいな声だったらとか思うこともありますよ。King Gnu常田さんのいつかのインタビューで、「いちばん日本人が好きな声と思って井口を連れてきた」と語っていて、たしかにわかるなと。あんなきれいな声の人ってそういないし、誰が聴いても素晴らしい声を聴いたときに、自分は真逆いってんなと思って。
 自分が作曲しかしない人だったら、たぶん自分の声のボーカリストは選んでないんですけど、そこも含めてそうなるしかないっていう感じですね。

――そうしかできない、と。

(オガタ):うん。おれの声で何が悪いんだっていうほどの自信があるわけじゃないし、自分の声が好きじゃない人がいるのもわかってるんですけど、でもこうしかできないし、ロックバンドだからこれでいいじゃんっていう。


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