Text:中村圭汰
Photo:Zuhn Choi
音楽×ファッションをテーマに開催された今回のイベント。アーティストは、SILASから提供された衣装を身に纏い、いつもとは少し違う雰囲気でステージに立つ。
毛色の異なる特徴を持つ5組のアーティストが入り混じるジャンルを越えたライブからは音楽の持つ無限の可能性を感じた。
オープニングアクトを務めたのは2人組ユニットMIRRROR。ステージに立つその姿からは、肩の力が抜けたリラックスした雰囲気を感じる。そんな空気感をそのままに、1曲目の“ice cold”へ。大きなアップダウンを繰り返すことではなく、心の機微を独特のフロウで見事に表現する。
ラテンのリズムを踏襲した“Shed”では、乾いたビートと粘り気のあるグルーブに対し、滑らかな動きで反応する。「かっこよく見せよう」とか「綺麗に踊ろう」という意識ではなく、あくまでも音楽に対し誠実に、反射的に身体を揺らした。
“U by my side”では、meiの刹那的な声と湿っぽくも力のあるTakumiの歌声が優しく触れ合うように重なる。違和感すら感じる独特の間合いで耳に残るリリックを次々と並べていくと、ラスト“never fall in love”では、躍動感のある息の合った掛け合いを見せつけ、ステージを終えた。
日本にルーツを持ち、アメリカで育った2人。彼らの持つ特異な感性は、何色にも染まらない美しさがあった。
「今日は一番かっこつけさせてもらいます、よろしく」
途中、Vo.石森は高らかに宣言する。オーディションで出演を勝ち取ったMellow Youthは、その言葉通りの、それ以上の「かっこよさ」を限られた時間の中で表現して見せた。
歪んだギターサウンドから“FUSE”が始まと、頭からエンジン全開。異なる声質のツインボーカルが入れ替わるスタイルの彼らは、その違いを生かして曲に豊かな表情を与えた。
“Neon Sign”は、捻りのあるサウンドメイクと中毒性のあるポップセンスを随所に感じる一曲。完成度の高い洗練された楽曲を、ライブという対話の中で肉体的な音楽へと昇華させていった。
観客に感謝を告げると、ラスト“Rouge & Memory”へ。アタックの強いドラムと泣きメロのギターソロが激情のクライマックスを演出すると、持てる全てを出し尽くした。 彼らは誰よりも輝こうと、沸点を振り切るほどの熱量で懸命に想いを届けようとした。至極シンプルで、それでいて最も効果的な方法がそれであることを彼らは知っていたみたいだ。
白く光る照明。映し出されるシルエットとそこに落ちる影。羊文学のステージが幕を開けた。温もりのあるカッティングギターにシンプルなドラムのビート、滑らかなベースがジョインする。じっくりと時間をかけて自分たちの音を会場全体に馴染ませるように“ハイウェイ”へ。一切の無駄がないサウンドは、音一つひとつの粒立ちが良く、すっと耳へ飛び込んでくる。
“夏のよう”では、Ba.ゆりか とVo.モエカのファルセットが美しく重なる。断片的な描写で心の内側を表現する歌詞は、記憶の片隅に残る青さを孕んだ儚さを引き連れてくる。曲が終わると、心の深くにある柔らかいところをぐっと握られたような余韻が残った。
最後に披露された“天気予報”は、疾走感溢れるナンバー。爆音で掻き鳴らされるギターサウンドからはロックの強度を感じる。静と動の両面を丁寧に絡ませ曲のイメージを自在にコントロールすると、爽やかな風のように吹き抜けていった。
観客から大きな声援を受けてステージに立ったTHREE1989。Vo.Shoheyの抜群の歌唱力で“UMBRELLA”を軽やかに歌い始めると、彼らのショーが始まる。
「僕たちTHREE1989です。踊っていきましょう。」
そう告げると、続くは“mint vacation” 。四つ打ちのビートがダンスに誘うと、フロアはパーティー会場と化す。観客とのコールアンドレスポンスで会場のボルテージは既に最高潮を迎えると、観客のクラップがイントロと化し始まったのは“High Times”。観客の熱気へアンサーを返すように、Shoheyは全身を使い、大きなモーションで高揚感を表現してみせた。
一貫して強いビート感とソウルフルな歌声にブラックミュージックの影響を感じつつ、J-POPの系譜を受け継ぐ耳馴染みの良いメロディーライン。
THREE1989というフィルターを通して出力される音楽は、共通言語として会場全体をいとも簡単に一つにしてしまう。
ラスト“UNIVERSE”では、複雑なアレンジとフックのある展開を詰め込みながらも、最後の音が終わるその瞬間まで、観客が手放しに飛び込んでいける遊び場を用意していた。
総勢13名、フルセットでの出演となったEmerald。ホーン隊の音色が一気に夜を深めると、緻密で繊細なアンサンブルが麗しく鳴る“Heartbeat”が会場を飲み込んだ。
弾むメロディーに合わせてステップを踏み、身体を揺らすVo.中野。鮮やかなピンク色の衣装は、彼の音楽に対する子供のような無邪気さを象徴しているようだ。
溶けてしまいそうなほど甘美な旋律から始まった“JOY”は至極のナンバー。一つひとつの言葉に敬意を払うように紡がれた歌詞は、そのイメージを何倍にも膨らませていく。琴線に触れる旋律は、心の奥にある名前の付かない感情をすくい取ってくれるような感覚になる。
彼らが最後の曲に選んだのは“黎明”。隅々まで研ぎ澄まされたサウンドには音の感触があり、人肌の温もりがあった。無理に飾ることも、取り繕うこともなく自然体な姿で表現するEmerald。それが何よりもステージ上を眩しく照らす。水曜日の夜に素敵な余韻を残して、大きな拍手に送り出されながらステージを後にした。
出演アーティストが当日着用した衣装は、SILASの特設ページにて紹介されています!
SILAS 特設ページ「特集・ライブハウスの中の人」vol.5 〜大阪・心斎橋編/ OSAKA MUSE(大阪ミューズ)〜
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