Text:agehasprings Open Lab.
さて、これまで私はカバー曲特集やイケメン特集などを始め、様々な切り口でPHC/Metalcoreというシーンの面白さを伝えてきました。しかしながら、その文脈を知っていなければ、中々興味を持ちづらいというのも事実です。いかにイケメンといえど、素性が分からなければ付き合うまで踏み切れないのと同じですね(イケメンならとりあえず付き合ってみるという大多数の意見には目を瞑る)。ということで、今回から序章、前編、後編の3回に分けて、2015年から2017年現在までのPHC/Metalcoreシーンを振り返っていきたいと思います。
現行のPHC/Metalcoreシーンを大枠でザックリと言い切ってしまえば、Bring Me The Horizonの5thアルバム『That’s the Spirit』以降のシーンであることは、コアユーザーにとって周知の事実であると言っていいでしょう。
デスコアと呼ばれる、メタルコアとデスメタルをマッシュアップした、シーン中最高最大出力と言えるマッシヴなサウンドでデビューした彼らは、自らの出自であるUKはもちろんのこと、シーンのメインストリームであるアメリカやここ日本でも、世界中で若者を中心に絶大な人気を獲得していきました。デビュー以降は、メンバーチェンジを重ね、アルバムのリリースごとに新しい文脈を取り入れたプロダクションを提示してきたBring Me The Horizon。本格的にエレクトロニクスとクリーンパートを持ち込んだことで話題を呼んだ、4thアルバム『Sempiternal』より、およそ2年半ぶりに上梓した5thアルバム『That’s the Spirit』。後にシーンを大きく動かすこととなるこのレコードで、彼らが行ったのはまさしく“ヘヴィネスの再定義”。
彼らの最大の武器でもあった、高質量のスクリームと轟音の如きヘヴィネスを一切放棄し、ダーティーなテクスチャーを残したクリーンボイスによる壮大なスケールのメロディーに、オルタナティヴ・ロックへと接近したバッキング。そして、2013年に新メンバーとして加入した、キーボーディストによるシンセサイザーのサウンドを全面的にフィーチャーした、緻密なエレクトロニクス・アレンジメント。バンドが続けてきたマイナーチェンジの延長線上にありながら、完全に振り切ったシフトチェンジにより、スタジアム・ロック然としたプロダクションとして構築された同レコードは、自身のヘヴィネスを再定義しました。同時に、シーンそのもののヘヴィネスを再定義してしまう程の強烈なインパクトを持ったものでした。もちろん、この時代を分断してしまう程の事件に対して、数え切れない程の賛否両論が唱えられたのは言うまでもありません。
しかし、結果的に彼らがバンドの更なる高みを目指し、Linkin ParkやFoo Fightersら世界的なロックバンドと並び立つため、完全セルフプロデュースという形で提示した“ヘヴィネスの再定義”。これは、2015年の時点で既にヘヴィネスが完全に飽和し頭打ちになっていた、おそらくリスナー達も食傷気味になっていたであろうシーンにとって、まさに待ち望んだエポックだったに違いありません。メタルコアをルーツに持つ彼らが、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでフルオーケストラを迎えて行ったLIVEパフォーマンスは、まさに“ヘヴィネスの再定義”を決定付ける象徴的出来事でした。また、シーンに更なる進歩の可能性を指示したことは間違いないでしょう。
2007年にThe Devil Wears Pradaが、2ndアルバム『Plagues』でポスト・ハードコアからメタルコアへのアプローチを行ったサウンドを提示。ヘヴィネスの新しい形を定義したそれは、モダン・スクリーモなどと呼ばれました。以降、メタリックなリフとスクリームボイスで疾走するヴァースに、テンポダウンしたクリーンボイスでのコーラス、そしてインタールードに搭載されたブレイクダウンという曲構成が定型化。それを忠実にトレースしたフォロワーバンドが数え切れない程台頭し、Metalcoreは一大ムーブメントに。2010年以降のシーンの勢力図はMetalcore一大勢力だったと言って過言ではありません。
しかし、奢れるものも久しからず、ある意味大量生産のライン状態が出来上がっていたMetalcoreシーンは、すぐ飽和状態に。2015年の時点で、既に衰退期に差し掛かっていたと言っていいでしょう。そんな中、約10年振りの衝撃としてシーンに投下された『That’s the Spirit』の波及によって、シーンは再始動することとなります。
そして、この再始動以降に新たな潮流として生まれたムーブメントが4つあると、私は解釈しています。
1.「ポスト・メタルコア化」
Metalcoreバンド達がBring Me The Horizonに倣い脱ヘヴィネス、逆説的なアプローチをすることによって、新しいMetalcoreの形を提示した。
2.「スクリーモ・リバイバル」
ヘヴィネスの再定義に呼応するように、ゼロ年代に活躍したPHCバンドが次々とシーンにカムバックしたことで顕在化した。
3.「ニューメタル・リバイバル」
Linkin Park以降のNu-Metalを、Metalcoreからのアプローチでモダンにアップデートして再燃した。
4.「叙情系の再評価」
良質な叙情系のバンドを次々と取り上げる、YouTubeのキュレーションチャンネルDreamboundの登場によって、メインストリーム化の兆しが見えた。
次回、これらのムーブメントについて、具体的な作品を交えて紹介していきたいと思います。
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