願い
- 1. 願い
- 2. 音色
- 3. 記憶
- 4. last word
- 5. 大切なあなたへ
販売価格:1,500円(+税)
品番:EGGS-032
Interview&Text:蜂須賀ちなみ
ビッグチャンスを次々と物にし、着実に知名度を上げているシンガーソングライター、琴音。そんな彼女が7月11日、ミニアルバム『願い』をリリースする。一度聴いたら忘れられない透明感のある歌声、そして現役高校生らしいあどけなさと歳不相応の人生観が共存する歌詞によって紡がれる音楽は、このCDリリースを機に、多くの人の胸を打つことになるだろう。
中学生の頃からオリジナル曲の制作を始めたという彼女は、現在16歳だという。いったいどのような人物なのだろうか? 話を訊いてきた。
――元々唄うようになったのはご両親が楽器やっていたからなんですよね。
そうなんです。お母さんはピアノをやっていて、お父さんはギターと歌をやっていて。音楽ができる環境が整っていたので自分も音楽に興味を持ち始めたんです。
――具体的にどういう曲を唄ってましたか?
お父さんが曲を作りためていたので最初はそれを何個か教えてもらってましたね。あと、流行っている歌を単純なコードにした楽譜を本にまとめたみたいなのってあるじゃないですか。その中で知っている曲があったらギターを弾きながら唄ってみたりとかしてました。
――弾き語りを始めてみていかがでしたか?
例えばカラオケ大会だったらオケがありますし、そうでない場合もお母さんがギターやピアノを弾いてくれたので、自分の歌以外の素材があることによって初めて音楽が成り立つみたいな感じがあったんですよ。でも、何かに頼っている不甲斐なさみたいなものをずっと感じていて。それに元々一人が好きだったので、いいところも悪いところも一人占めできる、全部自分に返ってくるのがすごく嬉しくて。誰にも迷惑がかからないし、自分自身で全部完結できる感じが合っていたのかなと思います。
――小学校の卒業祝いにお母さんにオープンマイク(※一般客がお店のマイクを使用し、パフォーマンスを行うことができるイベントのこと)へ連れて行ってもらったんでしたよね。
はい。緊張したんですけど、唄い終わったあとにごく少数のお客さんや店長さんが「上手だね」って言ってくださって。それまでは親にしか聞かせてなかったんですけど、結局親って自分の子供はそりゃかわいだろうし、だから褒めるじゃないですか、たとえ下手くそでも(笑)。そういうことを言わなくてもいい人たちから認められたんだっていう喜びみたいなものを感じて嬉しかったです。
――そんなきっかけで始まったライブ活動を続けつつ、今年はテレビ朝日「今夜、誕生!音楽チャンプ」で4週連続勝ち抜き、初代グランドチャンプに輝いたことでも話題になりました。そもそも「音楽チャンプ」にはどういう経緯で出場することに決めたんですか?
審査員の耳の肥えた方々が審査してくださるということだったので、自分の長所・短所がが明確になるだろうなあって。自分の歌のことがあんまりよく分かっていなかったので、他の人からしたらいったいどう見えるのか、知りたくて参加しました。
――小さい頃から歌手になることを夢見ていたとはいえ、まさかこんなことになるとは想像してなかったんじゃないですか?
全然思ってなかったです。自分の出番が終わって他の人の様子を裏で聴いていたときも「ああ、上手いなあ……」って思っていたし、毎回毎回負けるだろうなあと思ってましたね。「それでも自分の精一杯をやるしかない」という気持ちはずっとありましたけど、「今いけるかも!」みたいなのは基本的になかったです。
――実際、審査員の方々から講評をもらってどう思いました?
回数を重ねていくごと自分の本質が浮き彫りになっちゃうというか……ありがたいことなんですけど、正直ちょっと怖いなっていう気持ちもあって。でもそれを素直に受け取って向き合っていくべきなのかなって思いました。
――とても刺激的な経験になったんでしょうね。そんな怒涛の上半期を経て、ついに、今回のミニアルバムでシンガーソングライター・琴音の作品をリリースします。今、率直にどんな気持ちですか?
この数ヶ月ですごく劇的に事が変わっていったんですけど、ドラマみたいというか、時間の流れがすごく面白いなって。「こんなことが起こるんだ」みたいな気持ちもあるんですけど、すごくありがたいご縁だなと思ってます。
――今までは弾き語りが主だったと思いますが、今回は河野圭さんをプロデューサーに迎えて制作したとのことで。慣れ親しんできた自分の曲が生まれ変わるような感覚を味わえたんじゃないかなと。
すごくナルシストな言い方になっちゃうんですけど、改めて「あ、良い曲だなあ」っていうふうに思って(笑)。歌は自分の子どもみたいだってよく言うじゃないですか。それがこう、華やかに着飾られている感じが自分としてはすごく嬉しいですね。
――では1曲ずつお話を訊かせてください。まず、1曲目の「願い」はどういうイメージで書いた曲なんですか?
出来たのが中学3年生の時なんですけど、その頃、家庭科の実習で保育園に行ったんですよ。そこで生後数ヶ月の小っちゃい赤ちゃんを見たり、妊婦さんのおなかを触ってみたり、お母さん・お父さんに質問したりする機会があって。そういう真っ白な赤ちゃんや、赤ちゃんを育てているお父さんお母さんを見て、その様子がすごく温かいなと思ったんですね。で、仮に自分が大人になって結婚して子どもができた時にもそういう気持ちにもなるんだろうし、そういう温かさって繋がっていくもの、ずっとあるものなのかなって思って。それをどうにかして歌にできないかなって思った時に、出来た曲が「願い」なんです。
――1番は赤ちゃんを見守る母親目線の歌詞になってますよね。だけど2番では視点が移っていて。
2番はその赤ちゃんが成長して、今の自分ぐらいの年齢になった時期のことで。苦しいこととか面倒なこと、劣等感とかを感じだす時期だと思うので、すごく暗い気持ちになっちゃうようなこともあると思うんですね。それでもやっぱりいいことにも気づいていけるんだろうなあ、みたいな願いが込められているというか。だから2番は“ある程度いろいろなことを考えられるようになった子ども”の描写なんですけど、わりと自分の気持ちも入ってます。
――“大人”と“子ども”の境目にあたる描写は琴音さん自身の境遇とも重なっていると。で、このあと2曲目の「音色」、3曲目の「記憶」と先に進むにつれて、何かに向かって頑張る人の描写が増えていくじゃないですか。ここで描かれる“夢”と“現実”に揺れる感じもまた、琴音さん自身と重なる部分が多いのかなと思って。
ああ、そうですね。「大切なあなたへ」以外の曲は中3ぐらいの時に出来た曲なんですよ。その時期って高校生と中学生の間、なおかつ大人の子どもの間の何とも言えない時期だと思うんですけど、私はその時から音楽がやりたかったし、目指すものをちゃんと見て進んでいきたいなっていうのがずっとあって。当時自分ではあまり意識していなかったんですけど、そこに向かう気持ちみたいなものが、いざ思い返してみるとずっとあったのかなって思います。
――それに同じ境界にあたる描写でも、“子ども”と“大人”の方は「子どものままではいられないよね」という論調ですけど、逆に“夢”と“現実”に関しては、「自分自身の力でどうにでもできるよね」っていうガッツが出ちゃっているじゃないですか。だから琴音さんって、物静かだけど、内側は熱い人なんじゃないかなあと思っていて。
どうなんですかね? でも確かに、お母さんがすごく熱い人でお父さんも忍耐のある人で、昔から「やろうと思えば何でもできる!」「諦めるな~!」みたいな感じの教育をされていたからそうなのかもしれない(笑)。そもそも童謡ばっかり唄っていた保育園児が「歌手になるんだ!」みたいなことを言い出しても非現実的すぎると思うんですけど、親はずっと応援してくれていたし、「好きなだけ突き進め!」みたいな感じでずっと言われてきたので。そういう泥臭さみたいなものが自分の中にもあるんだと思います。
――そうですね。もう一つ気になったのが、「音色」でも「記憶」でも、基本的に<僕>は<君>に憧れを抱いているんだなと。
そうですね。自分は、ここで満足しちゃいけないというか、「常に邁進しなきゃ」「まだまだだから」って思わなくちゃいけないなって思っていて。そのためには、音楽でも内面的な部分でもいろいろな人たちの良さを吸収して、よりよい大人になっていけたらいいなと思っているんですね。それに、誰かに対して憧れる行為って「自分はこうなりたい」っていう意思の表れでもあるような気がして。そういうのって何かいいなって。
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