時代を映すティーンミュージシャンの歌声―Jai、ENNE、oozash、実佑

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Text:agehasprings Open Lab.

Logic『1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid』

昨年発表された、27歳のアメリカ人ラッパー・Logicによる自殺防止ソング『1-800-273-8255』。アメリカ政府が提供する、自殺防止ホットラインの電話番号をタイトルに冠したこの曲は、振り返ってみれば、Linkin ParkのChester BenningtonやLil Peepを筆頭に、余りにも衝撃的な訃報が数多く届けられ、たくさんの人々が悲しみに沈んだ2017年の音楽シーンにとって、特別な意味を持った楽曲になったことは間違いないであろう。

また注目したいのが、客演として参加しているAlessia CaraとKhalidという2人の若きシンガーソングライター達だ。2017年の大ヒット曲であるZedd『Stay』への参加や、ディズニー映画『モアナと伝説の海』のエンドソングを担当し、一躍注目を集めた21歳のAlessiaが歌うのは、「死にたい」と電話を掛けてきた同曲の主人公に優しく語り掛けるコールセンターの女性の声。若く希望に溢れた彼女が歌うからこそ、このVerseは未来を生きる光に溢れた力強いパートとなった。そして、現在19歳のKhalidが担当した、楽曲の最後を飾るVerseでは、「もう泣きたくない」「死にたくない」という、切々としながらも生きる希望が滲み出ているかのようなメッセージが、彼のエモーショナルな歌声によって綴られる。10代のKhalidによって歌われたこのVerseは、拭い切れない不安と向き合い、日々もがき続けるティーン達の思いを代弁しているかのようだった。

Lil Pump『"Gucci Gang"』


2017年以降の現在の音楽シーンにおいて、「ティーン」というファクターの重要性が世界的に更に高まっている。それは、音楽だけではなくエンタテインメントシーン全体に流れるフィーリングであると言っても過言ではなく、大ヒットしたドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』や、こちらも大ヒットした映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』などを筆頭に、少年少女達を主人公としたジュブナイル作品が数多くヒットを飛ばし、それがムーブメントとしてカルチャー、ひいては社会全体に影響を与えていることからもよく分かる。

前述したKhalidやLil Yachty、そして、ヒット曲「"Gucci Gang"」で一躍シーンの中心に躍り出た 17歳のラッパー・Lil Pumpなど。自身がティーンネイジャーであることを最大のアドバンテージとして、名立たるポップスター達と比肩して華々しい活躍を遂げるミュージシャンが数多く台頭しており、この混沌と分断の時代において「彼らが何を感じ、社会に対して何を問い掛けるのか」、それが今後の音楽シーンにおいて、より重要さを増していくであろうことは間違いないと言える。

さて、今回は新年一発目の企画として、ここEggsに登録している若きアーティスト達の中から、今の時代の声を担えるであろう、ポテンシャルを秘めたミュージシャンを4人ピックアップした。ちなみに全員女性になったことに他意はない。次世代のアーティストたちの声、しかと受け止めてほしい。

■Jai『Better Women』
https://www.youtube.com/watch?v=xDMxRt6IVA0

7歳からダンスをはじめ、 12歳で念願の初のステージに立ったというキャリアを持つシンガーソングライター・Jai。独学でギター、キーボードを学び始めて以来、東京各地のバーや、教会クラブイベントでのライブ活動をしているマルチな活動スタイル。そして、特筆すべきは彼女の歌声の持つ説得力。彼女と同じくハーフであるという意味で、日本で先達のアーティストを挙げればCrystal KayやEMI MARIAなどを挙げることが出来るであろう。しかしながら、そのスムースな歌唱スタイルや、しなやかな歌声がまとったフィーリングは、Chance The Rapperを客演に迎えた楽曲を発表し、注目を集めたシカゴの女性シンガー・Jamila Woodsや、英BBCが毎年ブレイク有力新人を選出する企画「BBC Music Sound Of, 2018」に選出された、マンチェスターの新鋭シンガー・IAMDDBら、2017年以降に台頭している女性R&Bシンガーのそれに近い。彼女のような海外の空気感をまとったシンガーが、しっかりとメインストリームに台頭することで、日本のR&Bシーンが更なる進歩を遂げることに期待したい。


■ENNE『baby』

以前も取り上げたことのある、1998年生まれのシンガーソングライター・ENNE。彼女の1stアルバム『U17』は、2016年以降のSSW的で、既存の日本における女性SSW像、いわゆるギタ女の呪いに縛られない自由なプロダクションだ。収録された楽曲は幅広く、クラブバンガーなダンスナンバーからアコースティックバラードまで、R&B由来のソウルフルかつスムースな歌声で自在に乗りこなすポテンシャルは、大袈裟に言ってしまえばAriana Grande直系のスタイルと言ってもいい。また、2017年以降日本の女性SSWシーンにも新たな波が訪れているのも周知の事実。ポップバンド・フレンズに所属しながらもプレイヤーとしても活動し、客演でも他アーティストの楽曲に参加するおかもとえみさんを筆頭に、iriやRIRI、大比良瑞希、Nao Kawamuraなど、これまでの「ギタ女」に縛られない自由なスタイルと、ブラックミュージックに接近した音楽性を持った女性SSWが数多く台頭し、ムーブメントになろうとしている。次世代の一角を担うのに十分なセンスと才能を持ったENNE。2018年の活躍に期待しかない。



■oozash『Ascent』

こちらも以前取り上げたことのある、岩手を拠点に活動しているティーンフィメールラッパー・oozash(ウーザッシュ)。昨年の未確認フェスティバル2017の“ラップだけステージ”では、唯一の女性参加者にして、随一のテクニカルなフローを披露し、審査員特別賞を掻っ攫ったのは記憶に新しい。世界との同時代性を持ったTrap主体のミニマルなトラックに、歌とラップを横断するフロー。時代の最先端のスタイルを地で行く彼女は、まさに次世代ラッパーの筆頭と言って過言ではないだろう。22歳のラッパー・Joey Bada$$の最新作『All-AmeriKKKan Bada$$』は、22歳の彼が、自身の育った街や自身の置かれた状況を見据え、未来に向かってポジティヴなメッセージを発信するという、力強いアルバムになっている。そういった意味では、ここ日本においても都市部と地方での文化の分断や広がり続ける格差など、ティーンだからこそ目の当たりする社会の息苦しさが数多くあるだろうと思う。自身の文脈をあらためて辿り、それを如何に音楽に落とし込んでいくのか。これからの進化に期待である。



■実佑『青空なんて飛びたくなかった』

現在メインストリームのポップミュージックにおいて、覇権を握っているのがプロデューサーであるマックス・マーティンが提唱した分業制のメソッド“トラックアンドフック”だ。1曲の音源を制作するにあたって、複数のプロデューサーやソングライター、アレンジャー、エンジニアが集まり、各々が最も得意とする仕事をこなすことで、一人では実現し得ないレベルのウェルメイドなプロダクションが出来上がる。このメソッドによって、ポップミュージックのクオリティと強度は飛躍的に上昇した。いわゆる「プロダクション至上主義」の時代である。しかしながら、AIがあらゆるものを管理し生成する、フルオートメーション化以降の時代が到来しつつある今こそ、個々の「デザイン」の力、「自己プロデュース」の力なのではないだろうか。そういった意味でピックアップしたのが、こちらも以前取り上げたことのある実佑だ。アコギを持って弾き語るというギタ女以降のSSWである彼女だが、他の女性SSWと違うのは歌声とプロダクションに、フォークの要素だけでなく、James Blake以降のアンビエントやエレクトロニカ、R&Bのフィーリングが宿っている。この不思議な透明感と浮遊感が、彼女のソングライティングをより鮮明に浮かび上がらせている。日本において、女性SSWは長年「女性の本音を歌うモノ」というイメージが色濃かった。しかし、それ故に普遍的な真理から遠ざかってしまうことも多々あったというのも事実であると思う。混沌とした現在の世界において、彼女の持つ澄み切った感性は、まさに普遍的な心理を射抜くにはハマり役なのではないだろうか。


2018年以降の日本の音楽シーンにおいても、あらためて重要になってくるのが「ティーン」の存在であり、彼ら彼女たちが発信する「トピックス」であろう。音楽的にも文化的にも世界情勢からは分断され孤立しつつある日本においても、状況は実に混沌を極めた不安定な時代であることに変わりはない。この社会を、この世界を若者たちがどう見て、どう受け止め、何を問い掛けるのか。そして、それを如何に音楽という形に落とし込み発信していくのか。今も昔も変わらず、今後のシーンの鍵を握っているのは、ここEggsに登録している10代のミュージシャンたちである。この先の未来を期待したい。


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Jai(ジェイ) R&B、ゴスペル、POPS、HIPHOPシンガー/ダンサー /作詞作曲

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ENNE
1998ウマレ 18サイ シンガーソングライター。えね。
踊りとピアノとシースルーが好きです。
トレードマークはキスマーク。
1st Album U17 iTunes、レコチョク等で配信中です。

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oozash
17歳ラッパー

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実佑
実佑です。みなさまのおかげで未確認フェスティバル三次審査へいくことができました✨ありがとうございますこれからも曲ぜひ聞いてね!音源はすべて自分で打ち込んで弾いているのでズレているところが多数ありますが、ゆる~い気持ちで聞いてください。

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