Text:agehasprings Open Lab.
突然ではあるが、私はモテたい。差し支えなければ一週間で5人の女性に告白して欲しい。放課後、校舎裏に呼び出され、その意図に全く気付かないふりをして「ったく、何の用だよ。こんな所に呼び出して」とか言いたい。そもそも学生ではないし、今時こんなオールドスクールな告白、存在しているのかどうかも不明だが、とにかく私は年甲斐もなくモテたいのだ。
ではモテるために何をすべきか。そうラップだ。
数年前で言えば「モテるためにはバンドを組む」ことが、ある意味での定番だった。真面目にバンドをやってる人、ごめんなさい。しかし、2017年以降はどうだろうか。確かにバンドマンは変わらずモテているだろう。マジでふざけんな。しかしながら、バンドマン以上にモテのスタンダードになりつつあるのがラッパーなのである。真面目にラップやってる人、本当にごめんなさい。
海外において、ストリーミングサービスで音楽を聴くことが、ライフスタイルに完全に根付いた2017年の音楽シーンは、各メディアで言及されている通り、ポップミュージックのスタンダードが、R&BやHip Hopというブラックミュージック由来の文脈やアクト達によって完全に刷新された年であった。
それは、データ調査会社のニールセンなども発表している通り、2017年のアメリカの音楽売上データにて、Hip HopとR&Bがロックの売上を上回り、史上初めて年間を通して最も売上の大きいジャンルとなったことからも証明されている。
また、「ラップ」というアートフォームの懐の広さと汎用性は、音楽のヒットチャート上だけに留まらない。例えば、ロンドンの若者たちに農作業の楽しさを伝えるためのツールとしても用いられているなど、今一番クールなカルチャーであると同時に、老若男女にアプローチできる最もポピュラーなツールとしても、生活の中で幅広く機能している。
この潮流は、もちろんメインストリームであるポップミュージックの外側にも強く波及している。ある意味ポップミュージックから一番遠いところに位置するヘヴィーミュージックシーンにおいても、Linkin ParkやLimp Bizkitらが金字塔を打ち立てたヘヴィーミュージックに、ラップやHip Hopの要素を取り入れた「Nu-Metal」と呼ばれるサウンドが、メタルコアからのアプローチという新たな世代のアティチュードとして息を吹き返した。
また、ここ日本においても、文脈こそ違うが、人気番組の「フリースタイルダンジョン」を発火点として、ラップミュージックがシーンを飛び越えた盛り上がりを見せ、それに共鳴するように新世代のラッパー達も数多く台頭。渋谷駅前では、毎週のようにサイファーが行われるなど、これまでアンダーグラウンド気味だったシーン自体が、大幅にボトムアップされたことも印象的だった。
そして、このムーブメントに共鳴するように、あらためて胎動し始めているのが「Hip Hopバンド」の存在。日本において「Hip Hopバンド」というと、ミクスチャー・ロックの代表格でもあるDragon Ashや、韻シストなどが成功を収めており、イメージしやすいことだろうと思う。近年では、SuchmosやSANABAGUNなど、ミクスチャー・ロックの文脈を受け継ぎながらも独自のセンスで解釈、新たなサウンドとスタイルを提示し、人気を集めているバンドも台頭。そして、その文脈は更に下の世代にも受け継がれ、昨今のラップミュージック隆盛に共鳴し、耳の早いリスナー達から注目を集めている。
私が思うに、その筆頭とも言えるのがこちらのバンド達。
昨年、彗星の如くシーンに台頭し、一気に話題を集めたHip Hopグループ・踊Foot Works。
「“映画のスクリーンから飛び出してきた”架空のカートゥーン・バンド」というGorillazのような設定を持つ INNOSENT in FORMAL。
シンセポップやベースミュージックを基調としたサウンドに、Hip Hop、R&Bのグルーヴやフィーリングを取り入れた4ピースCICADA。
グランジ由来のザラついたテクスチャに、Hip Hop由来のグルーヴを融合した、新世代のミクスチャー・ロックを提唱するKing Gnu。
深夜の路上のフリースタイルで鍛えた、MC前田拓也 a.k.a. Scarfを筆頭に結成されたScarf & the SuspenderS。
このように、ラップやHip Hopを独自の解釈でバンドサウンドに昇華している若手が次々と台頭している。
そこで、今回の記事では、そんな彼らに続かんとばかりに産声をあげた、Hip Hopを文脈に持つ新鋭バンドを、Eggsの中から3組ピックアップした。Hip Hopバンドを銘打っておいて、ゴリゴリにラップをしているバンドは皆無なチョイスで恐縮だが、R&BとHip Hopの壁が無くなり、ブラックミュージックやEDM、ポップミュージックというタグも無くなった2017年以降においては、ある意味でスタンダードと言えるのではないだろうか。では、どうぞ。
昨年の『未確認フェスティバル2017』ファイナリストである、名古屋の新鋭4ピース・Some Life。Hip Hop由来のグルーヴとラップ、そしてJ-POP由来のキャッチーなメロディーをマッシュアップした、いわゆる「ミクスチャー・ロック」以降の、名古屋の先輩であるSPYAIRにも通じるサウンドを展開。
ストリートカルチャーに憧れた少年のような、オールドスクールな“不良っぽさ”を、現在の若者らしいセンスで解釈しているところは、Suchmos譲りと言ってもいいだろう。Vo. DAIYA-TANのオーディエンスを巻き込むステージパフォーマンスも、既に目を見張るところがあり、これからスキルやセンスを磨くにつれ、無限に進化できそうなポテンシャルを秘めている。
名古屋出身の4ピース・Monaca yellow city。AORやファンク、ソウル、HIP HOPを通過したグルーヴィーなインディー・ポップサウンドは、ceroやbonobosなどを彷彿とさせ、いわゆる2015年以降の“シティー・ポップ・リバイバル”系譜の地続きにあるプロダクション。同じ系譜にあたるAwesome City ClubやLUCKY TAPES、evening cinemaなどのファンはピンと来るバンドではないだろうか。
2017年以降のHip Hopでスタンダードとなった、ラップとメロディーを横断するような歌唱法を取り入れているかと思えば、しっかりとギターのカッティングが楽曲の中で機能しているなど、様々な文脈を洒脱に咀嚼し、自然な形でサウンドに昇華できている。これは、まさしくあらゆるタグ付けが不可能になった現代のセンスのなせる業といったところ。都会の夜に良く似合う。
SNSでのバズから一気にメジャーデビューへと駆け上がったポルカドットスティングレイや、UKロック由来のインディーサウンドを鳴らす新鋭Attractionsなど、今一番熱いシーンと言っても過言ではない福岡からの新鋭は、馴染み深いメロウなメロディーをHip HopやR&B系譜のグルーヴで鳴らす6ピースバンド・MADE IN HEPBURN。
2017年夏にリリースされたシングル「Malibu」が、配信限定にも関わらず各地でスマッシュヒットし、サブスクリプションの再生数は合計3万回を超えるなど、既に頭角を現している彼ら。プロダクションは“シティ・ポップ・リバイバル”以降のバンドポップだが、洗練されたサウンドに人懐っこい歌声とメロディーが、彼らの最大の特徴。完成度は高いものの、オリジナルとまでは至っていない感がまだまだあるため、是非オンリーワンの武器を見つけて欲しい。
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