Text:agehasprings Open Lab.
世の中には“理由はよく分からないけどそう決まっている”という事象が数多く存在している。例えば「1+1は2である」とか「重力は上から下に作用する」であるとか、そういった真理に近い法則のようなものがそうだ。ただ、例の規模が余りにも大きいので、我々の身近なところで置き換えるとするならば、「サッカー部はモテる」と「バンドマンはモテる」。この2つがそれであろう。モテない野郎の寂しい皮肉ともとれるが、実際によく分からないのだから仕方ない。何故サッカー部というだけでモテるのか。お前、全然イケメンちゃうやん。単純にサッカーという競技自体の人気にぶら下がった二次作用というところはかなり大きいとは思うが、それはそれとしても全く納得はできない。
そして、バンドマンもそうだ。何故バンドマンであるというだけでモテるのか。私は一切理解できないが、誰が決めたかもわからないまま、既に“そう決まっている”のでどうすることもできない。特にギター。あいつらはマジでやたらとモテる。ギターを弾けるだけで何故そうもモテるのか。いや、心の中では実は分かっているのだ。だってカッコイイもの。そのカッコよさたるや、弾けない人間とは雲泥の差である。仕方ないのでバンドマン、そしてギタリストがモテるのを、700000000000億歩くらい譲って納得してやらないでもない。
そう、前述が長くなったが、今回はギターの話である。
2017年は世界的にバンド勢が苦戦を強いられた年だったのは周知の事実。ヒットチャートはラップアクト達が覇権を握り、そこで鳴っている音はTrapやTropical House以降のダンスポップが大半を占め、ギターの音が鳴ることはほとんどなかったと言っても過言ではない。ヒットチャートに食い込んだ数少ないバンド勢であったmaroon 5やtwenty one pilots、Imagine Dragonsらでさえ、そのプロダクションは最新のポップスのマナーやHip Hopの文脈を多大に加味したもので、それが純然たるこれまでの“バンドサウンド”であると言えないというのも事実。
しかしながら、今年に入って早々と届けられた元Fifth HarmonyのCamila Cabelloの1stアルバム『CAMILA』や、Kylie Minogueの新曲「Dancing」では、サウンドの中核でアコースティックギターやフォークギターの音が確かに鳴っており、2018年のポップスにまたギターの音が帰ってくるであろうことを予感させている。
Kylie Minogue「Dancing」
さて、「音楽解体新書」二回目となる今回は、そのギターの音に注目していこうと思う。ストリーミングサービスの勃興以降、音楽を聴くデバイスはスマートフォンなどのモバイルのものに移行し、バンドサウンドのダイナミズムを完璧に楽しむことは難しい状況になりつつある。そういった意味で、2018年以降のシーンにおいてあらためて問われてくるのが、「ギターの音をどう使うか」ではないだろうか。そこで、今回は「ギターの音をどう使うか」という点で、“ギターの音を楽曲の中で効果的に作用させている”と、個人的に感じる3組をピックアップした。
神戸発Vo.&Gt.の2人組ユニット・Opus Inn。yahyelやPAELLAS、DATS、D.A.N.など、国内勢にも通じるR&B、Soul、Electronicaを通過したIndie R&B以降のプロダクションを体現しているが、メンバーにギタリストがいるだけあって、打ち込みによるミニマルでドライな楽曲の中で、ギターの音がしっかりと肉体性を持って機能している。もちろん、ウワモノとしての役割もあるが、どちらかと言えばプロダクション全体のフィーリングをコントロールする役割での機能が大きいと感じる。時には楽曲にグルーヴを与え、時には楽曲に浮遊感を与える。楽曲によって巧みに使い分けられる様々なタッチとフレーズは、まさに「効果的」なギターの使い方と言える。ギターの音がPopsに戻ってきた2018年のシーンを先駆ける新鋭だ。
東京発のHip Hopバンド・HipDistrist。Funk、Soul、Rock、Jazzの文脈をサウンドに消化したとプロフィールにある通り、MCをメインに据えたHip Hop由来のグルーヴ感と、ロックバンドならではのダイナミズムをマッシュアップしたエクレクティックなサウンドが特徴。そのスタイルは、いわゆるDragon Ash以降のミクスチャーロック的でもあるが、Limp Bizkitのような、Nu-Metal/ラップコア的な一面も持ち合わせている。面白いのはギターの音の主張の強さ。どこまでも荒々しくザラついた音色のギターによって、楽曲全体に立ち上がっているのは強烈なストリート感。近しいスタイルで言うと、SANABAGUNが挙げられるものの、彼らの持ち得る東京のシティ的なストリート感ではなく、アメリカのストリートに近いフィーリングだ。
昨年の未確認フェスティバル2017に出場するためだけに結成されたという、ギタリストのカズナリとラッパー(トラックメイカー)のレンノスケによって結成されたユニット・PANDA$。彼らは悔しくも大阪予選にて敗退してしまい、その後の動向は不明だが、サウンド自体は非常に挑戦的なものだったと言える。イントロから鳴り始める不穏な質感のギターは、2017年のシーンを席巻したTrapナンバーで鳴っている不穏な音そのもの。また楽曲の中でも、ギターの音は、いわゆるバンドサウンドの中で聴くようなギターのそれとは全く違ったテクスチャと鳴り方で機能している。今の日本のシーンで、どの文脈にも属していないようなスタイルのユニットであったため、イベントのための企画ものユニットとして終わるのは少し寂しい。是非、機会があればガッツリオリジナルの音源を作ってほしいと思う。
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