これからと夢
- 1. DAYS(テレビアニメ「DAYS」エンディングテーマ)
- 2. これからのこと
- 3. 君はまた夢を見る
※ボーナストラック付き
「未確認フェスティバル2015」でのグランプリから、その“感情をアンプに直結させた”ような音楽でシーンを駆け上がってきた、Shout it Out。限定シングル『17歳』が即完し、Eggsレーベルの第1弾アーティストとしてミニアルバム、EPを立て続けにリリース。そして今夏、『青春のすべて』で満を持してのメジャーデビューを果たした。と、傍目には順風満帆そのものといった彼らだったが、その矢先に突然メンバーの脱退を発表。あまりの出来事にファンの間では「4人のShout it Outじゃなきゃイヤだ」という声も上がったという。いったい彼らに何が起こったというのか?彼らは言う「意思を持ってやり続ける姿を音楽で示したい」。12/7リリースされたばかりのEP『DAYS』の表題曲の一節にはこうある。
さまよい歩いたあの一歩も ちゃんと未来に向かっているんだよ
立ち上がれなくなる日があったって それでも僕ら終わらなかったよ
目指すべき場所なんて 今から探すんだ 終わらない夢をいつまでも見よう
“10代の代弁者”だった彼らも、ついに平均年齢20歳を迎える。“夢の先”を歩き出した彼らはどこに向うのか。
<前編>では、結成時のエピソードからメンバー脱退からのアクションまで。これが、今まさに「少年」から脱皮しようとする、未来を切り開く若者のリアルストーリーだ。
Text:横田 大
Photo:Zuhn Choi
――結成は高校の軽音楽部とのことですが、当時のことをお話いただけますか。
山内彰馬(以下、山内):小学生の頃から音楽がやりたくて、中学のときにロックに出会ってから、バンドを結成することを夢見てたんです。それで高校もわざわざ軽音楽部のある学校を選んで。けど入学した直後はまったく友達ができず、悶々(もんもん)としていました。でもある日、友達が一人もいないのに、新入生歓迎会でカラオケに連れて行かれまして(笑)。突然マイクを握らされて、歌ったんですね。そこで、メンバーに誘われたのが結成のきっかけです。
――よほどすごい歌声だったんでしょうね。当時、影響を受けていた音楽ってどんなものだったんですか? 二人とも、初めて買ったCDはAqua Timezだったとお聞きしましたが。
細川千弘(以下、細川):そうなんです、偶然二人とも。僕らが中学生くらいのときは、やっぱりRADWIMPS一色でしたね。バンドものが好きな人のなかでは絶対的な存在、っていうか。
山内:音楽的ルーツって意味だと、僕は親の影響もあって昭和歌謡ですかね。中学生になってから、それこそRADWIMPSとかバンドに出会って。世代的にものすごく流行ってましたからね。あと、世代じゃないですけど、フラワーカンパニーズとか。
――当時フラカンは「深夜高速」で再燃してましたもんね。後にトリビュートで、斉藤和義やおとぎ話など「深夜高速」だけをひたすらカバーしたアルバムが出てましたよね。
山内:おとぎ話も大好きなんですよ!
――そういうテイストも感じていました。Shout it Outは音楽もそうなんですけど、言葉が強いバンドだと思うんですが、何か影響を受けた文学ってありますか。
山内:本はよく読んでいて、山田太一や石田衣良、太宰治とか好きな作家さんはいるんですけど、直接的に自分たちの音楽とは通じてない気がします。感覚としてはいろんなところから摘んでいる、というか。たくさん吸収してきたから個性が出せているのかな、と。
――詞が文章として、すごく完成されていますよね。ファンの方のコメントで「普通の言葉で書かれているのに、なんでこんなに響くのか」というようなものがあって。まさに、と思いました。
山内:なるべく難しい言葉は使わないように意識しています。僕自身、音楽が好きでずっと聴いてきて、ロックでもポップスでも「どんな楽器が鳴っているか」といったことよりも、まず歌詞に耳を傾けていたんです。なので自分が表現するなら、やはりそこに重きを置きたくて。それに詞を書くときは、なんかカッコつけて「こういう言い方したらおもしろいんじゃないか」と考えたり、難しい言い回しにしてしまうと、本当に伝えたいことがねじ曲がってしまうと思うんです。だから日記じゃないですけど、誰かに見てもらうことは意識し過ぎず、思ったことを素直に書いています。
――歌詞の話が出たので、曲づくりについてはいかがですか。
細川:言葉の力を表現するのは、バンドとしてもすごく大事にしてるところです。制作していく段階でも、彰馬の歌詞とメロディをいかにストレートに響かせるかを念頭につくっています。そういう意味では、さっきの影響受けた人って話だと、彰馬がもともと「いちばん尊敬するバンド」と言っていて、プロデューサーとしても参加いただいている柳沢(亮太)さんのバンド、SUPER BEAVERにすごく影響を受けています。SUPER BEAVERも言葉の力が本当に強いバンドなので、アレンジ面ではとくに。
山内:曲づくりに関しては、だいたい1つ“必殺フレーズ”じゃないですけど、曲の核になるフレーズが思い浮んで、そこからサウンドや言葉を膨らませています。けっこう、ソングライティングする方って、“曲が降りてくる”って言う方が多いと思うんですけど、僕はメロディはまったく降りて来なくて。突然、文章が一行だけ浮かんできて「これをどう楽曲にしようか」って。アレンジに関しては、僕が超アナログな人間なもので、携帯のボイスメモで録ってきたフレーズを、スタジオに入って一緒に膨らませていく感じです。
細川:スタジオではそのボイスメモを聴きながら、彰馬がサビやコード進行、曲の感じをメンバーに説明して、せーのでセッションしてつくっています。けっこう昔ながらの感じですよね(笑)。
――たしかに(笑)。でも小説家のようですね。ある一節にたどり着くために、ほかの部分をつくっていく、という。
細川:ほかのバンドだと、メロディだけ先にあって、仮歌でアレンジを詰めてから歌詞を入れるってやり方も多いと思うんですけど、彰馬は基本的に最初から歌詞が出来ている。だから、曲の世界観をメンバー間で共有できた状態でスタートするので、言葉の力を演奏でより密接に表現できているんじゃないかと。
――Shout it Outの直情的な表現は、そこから生まれているんですね。
山内:メンバーにはちょっと負担かな、と思うところもあるんですけど、セッションでやるから生まれる表現もあるのかな、と。そんなに考え込まず、裸の歌を聴いた状態で、それぞれが思ったことを演奏に落とし込んでいければいいと思っています。なんか僕、仕掛けとか苦手なんですよ(笑)。
――話は変わりますが、頭角を現した『未確認フェスティバル2015』(ex.『閃光ライオット』)でグランプリを獲るまでは、ずっと関西のライブハウスシーンで活動されてたんですよね?
山内:街の小さなライブハウスで、毎週のようにライブしていました。でも個人的には、有名になりたいからコンテストに出よう、とかは全然思ってなくて。「どこまでやれるか戦ってみたい」と思って出たんです。これはバンドに限った話じゃないんですが、考え方として僕は「何か大きな目標を立てて、そこに向かってコツコツやる」というよりは、「一瞬一瞬を楽しんでやって、たどり着いた先におもしろいことが待っている」というスタンスなんですね。『未確認フェスティバル』も、前身の『閃光ライオット』のときから挑戦していたので、リベンジの気持ちで挑んでいました。
――ここで結果を残せたから、次はこれだ、という感じではなく。
山内:そうですそうです。先を見て考えなくても一瞬一瞬を積み重ねていたら、どんどん次へ進めてたんですよね。それも、振り返ってみて歩いて来た道を知った、というか。
細川:最近、ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんとマーシー(真島昌利)さんのインタビューを読んだんですけど、そこでお二人が「いま洋楽シーンでトップにいる人たちも、別にトップ目指してやってたわけじゃなく、本当に自分たちが楽しいことをやってきて、気づいたらそこにいた。俺たちも実はそうなんだよね」って、同じようなこと言っていたんですけど、それがすごくカッコよくて。周りのスタッフさんは、大きな目標に向かってやってくださってるじゃないですか。僕らプレイヤーはそれについて行く、って言ったらアレですけど(笑)。しっかりと道筋を立ててくれてる方がいるからこそ、活動ができているんだろうなと思いました。
――いますごく幸福な状況にあるんですね。グランプリを獲って状況や生活は一変したんじゃないですか?
山内:うん、すごく変わりましたね。それまでは“学生がやってるバンド”だったんですけど、グランプリ以降はいろんなところからお誘いをいただくようになりましたし、夜行バスに乗って全国いろんなところに行ってライブをして、生活の中心が完全に音楽になりました。
細川:僕はちょうどそのころメンバーとして加入したんですが、彰馬と一緒にこの音楽漬けの日々が経験できて本当に良かった。少し前までは何もわからなかったんですけど、いまは本当に音楽やバンドのことだけ考えているような毎日で、少しずつですけど方向性も見えてきました。なのであのイベントは、僕らにとって本格的に音楽を始めることになった転機だったんだろうなと思います。
――その後、タワレコ限定シングル「17歳」が1ヶ月で完売し、Eggsレーベルの第1弾アーティストとしてミニアルバム、EPを立て続けにリリース。今夏、満を持してメジャーデビューですもんね。さっき“幸福な状況”と言いましたけど、傍目には非常に順風満帆な気もしますが、実際はどうだったのでしょうか?
細川:外から見たら、そう見えちゃうところもあるかもしれないですけど、実際には『未確認フェスティバル2015』も3度目の挑戦だったとメンバーから聞いてきましたし、僕が加入してからも百発百中でサクセスストーリーを描けてるかっていうと、そうでもなくて。それこそメジャーデビューした途端、メンバーが脱退してしまったり。でも、その悔しい気持ちを楽曲にしたりしてバネにできているのが、僕らの強い部分だとは思います。
山内:なんというか僕は根がネガティブなので、どんな状況でも苦悩はしていて。高校生のときもインディーズ時代も、メジャーデビューした今も、状況状況に応じた不安や葛藤があって、それが途切れたことは本当に1秒もないんです。それに、完全に現状に満足してしまったら終わりだ、とも思っていて。メンバーが脱退したことについては、もちろん淋しさや悔しさ、やりにくさもありますけど、見方を変えれば二人になったからこそ結束力が強まったり、できることの幅を広げるチャンスでもあるわけです。だから状況的なことを人と比べても仕方がないし、もっと深いところにスポットを当てて考えるべきかなって。……でも、そう考えると、もしかしたらそれぞれの状況って、その人にとっての最良のカタチが現れているのかもしれないですね。すごくバッドな出来事も起こるべくして起こっている、というか。結果論と言われればそれまでですけど。
――なるほど。脱退したメンバーから「走り続けてきて、燃え尽きてきてしまった」というコメントもありましたね。
山内:そうですね。それこそ、さっき言った考え方の違いだったのかな。僕らとしては別にメジャーデビューを目標としてやってきたわけじゃなく、やってきた先のメジャーだった。でも彼らはたぶんメジャーを夢見ていたところがあって、そこがゴールだった。
細川:もう価値観の違いをどうこう言っても仕方がないと思い、真摯に受けとめました。だから、彼らが抜けることになった後も、ネガティブな話は1回もなくて「じゃあ、俺たち二人でやろう。これからどうしていこうか」と、すぐに未来の話をしていました。正直「やっぱり4人のShout it Outじゃなきゃイヤだ」って声も聞こえてきたんですけど、僕らに止まる気はまったくないし、最近では逆に二人になっても変わらず活動している姿を見て励まされたと言ってくれる人たちがいるから、僕らはそういう人たちに向けて音楽をやっていこう、意志を持って続けなきゃならない、と思っています。
【後編】はコチラ
「特集・ライブハウスの中の人」vol.5 〜大阪・心斎橋編/ OSAKA MUSE(大阪ミューズ)〜
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