Text:飛内将大
前回に引き続き、耳元にあらゆる空間を生み出す、夢のようなエフェクター、リバーブについて。
部屋自体を響かせるエコー・チェンバー、巨大な鉄板を共鳴させるプレート・リバーブに続いて、今回はバネを共鳴させる“スプリング・リバーブ”の登場。
その歴史はハモンドオルガンから始まった。
現在も、世界中のアーティストに愛される、代表的な鍵盤楽器のひとつであるハモンドオルガン。1934年、ローレンス・ハモンドによって発明された。それ以前は、オルガンといえば巨大なパイプが複数連なるパイプオルガン。誰もが大聖堂に響き渡るその神秘的な調べをオルガンと認識していたため、響きのない開発段階のハモンドの音では、オルガンの仲間として分類され難かった。
ハモンドは、電気で動く小型のオルガンを実現するために、“ベル電話研究所”が発明した「複数本のバネを使い、長距離電話の際の遅延を再現する装置」の技術を発見。それを応用して、バネを共鳴させることで音に響きを加えることに成功し、ハモンドオルガンを“パイプオルガンの仲間”として認識させることが出来た。それがスプリング・リバーブユニットのはじまりである。
当時のハモンドのリバーブユニットは1mを超える大きなものだったが、技術革新は進み、1959年にはネックレスリバーブと呼ばれる、約35cmの箱にネックレス状のバネを吊るし共鳴させるユニットを発表。1960年には、ネックレスリバーブを生み出したエンジニアの一人が、バネを吊るすのではなく張力を与えることで、さらに小型で、それまでのユニットの“衝撃への弱さ”を克服した“Hammond Type 4”の開発に成功した。このType 4は、ギターメーカー“フェンダー”の創設者レオ・フェンダーの目に留まり、現在も主流なギターアンプ“Fender Twin Reverb”にも搭載され、世界標準のスプリング・リバーブユニットとして広まっていった。
映画やアニメ、ゲームなどでバネの効果音を耳にする機会があったかと思う。恐らく、最初に頭をよぎるバネの音のイメージは、「ビヨょょょ〜〜〜〜ん」であろう。スプリング・リバーブは、まさにそのイメージのように、ギターを弾くと「ジャょょょ〜〜〜〜ん」と言った具合に、バネの響きが加わり、余韻が伸びる。それは、エコー・チェンバーのような自然の響きとも、プレート・リバーブのような滑らかさとも違う。少し大袈裟で「ほら!響きますよょょょ〜〜〜ん」といったアクのある音だ。そのアクが強烈な個性となり、現在も多くのギターアンプなどに搭載され、他のリバーブには真似出来ない音として重宝されている。
尚、スプリング・リバーブの内部には、本当にバネが張ってあるので、叩くと「バィィィ〜〜ん」と音がする。アンプを蹴り倒し、「バィィィ〜〜ん」を全力で楽しむアーティストも多数生まれて来たが、極力、物は大切にしたいところである。そんな人のために「スプリング・リバーブを蹴った音を再現するエフェクター」というものも存在するので、そちらを是非。
ところで「複数本のバネを使い、長距離電話の際の遅延を再現する装置」を一体何のために使っていたのか、気になって仕方がない。
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